再生医療製品「食道再生上皮シート」、東京女子医科大発ベンチャーが26年度実用化
東京女子医科大学発ベンチャーのセルシードは開発中の食道再生上皮シートについて、2026年度中の実用化を目指す。手術後の食道狭窄(きょうさく)を防ぐ効果を期待して有効性を再確認する追加の臨床試験(治験)を進め、25年にも承認申請できる見通し。人の細胞から採取・培養してつくる再生医療製品の事業化を進める一つ。他人の細胞をもとに軟骨をつくる細胞シートは22年度末にも治験届けを出す方針だ。
食道再生上皮シートは、患者本人の口の中の粘膜組織から採取した細胞からつくる。食道にできたがんを内視鏡で切除した後に貼り付けると、傷の修復を促し、狭窄を防ぐ効果が期待されている。
東京女子医大の臨床研究を経て、セルシードが16年に第3相の治験を始め、20年に追加治験届を提出。17年に「先駆け審査指定制度」の対象品目に指定されている。
一方、軟骨組織から採取・培養した軟骨細胞シートは、加齢などで軟骨がすり減って失われた部分に移植する。根本治療がない難治性の変形性膝関節症の治療に使われることを想定している。
患者本人の健康な軟骨組織から採取してつくる細胞シートは東海大学が11年に臨床研究を開始。19年には先進医療の承認を得て、シート製造は同社が担っている。ただ、安定供給には他人の細胞を使う必要もあり、同大学で研究が進められた。
技術を継承した同社は国立成育医療研究センターを通じ、多指症患者の治療で出る細胞を商業目的に提供してもらう体制を整えた。組織の安全性、有効性を分析・解析しながら治験に備えている。
食道がんと診断される人は国内で年約2万2000人。内視鏡で切除する治療が増えている。変形性膝関節症の患者は潜在的に約3000人。高齢化で増加が予測されている。
日刊工業新聞2021年11月22日