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「日本版カグル」誕生なるか、特許庁がAI開発者コンペ開催へ

特許庁は人工知能(AI)を利用した商標の画像検索システムの開発にデータ科学者を参加させる。26日から競技会(コンペ)を実施。優れた検索ツールを審査システムに搭載し、2022年4月にも運用を始める。コンペ形式で個人が開発したシステムを評価し、実際のシステム運用に取り入れるのは特許庁で初めて。商標審査時の審査官の負担を減らすとともに、システム導入にかかる時間やコストを減らせる。

開発期間は22年1月末までの2カ月間。その後、特許庁での検証期間を経て、同年2月に優勝者を決定。優勝者のAIモデルを利用し、同年4月にも特許庁のシステムで稼働する運びだ。

参加するデータ科学者は政府のシステム開発を経験できるメリットがある。入賞が学生の就職活動に有利に働いたり、開発成果を学術論文にするなどイノベーション促進への貢献も期待される。

特許庁の商標出願の際には先行する商標と同一か類似の図形の商標がないかを調べる。競技会では80万件以上の商標の画像データを参加者に提供。参加者は検索対象の商標に対し、同一もしくは類似する商標を上から順に表示するような検索エンジンを開発する。

提供する画像データには、あらかじめペアの商標に関して「全体が酷似する図形同士」「向きが異なる図形同士」などと分類しておき、参加者の開発ツールを利用した際の検索表示の順番の正確性を検証する。

米グーグルが主催し、企業や研究者のデータを分析する最適なAIの作成を競い合うイベント「Kaggle(カグル)」を参考に、特許庁では日本版カグルの実施を検討してきた。20年の特許庁の商標の出願件数は13年比1・5倍の18万件と、年々伸びている。一方で20年度審査官の数は13年度比10%増と微増で、審査官の負担は大きく検索ツールの精度向上が望まれていた。

日刊工業新聞2021年11月22日

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