ヘリコプターの夜間・低空飛行を支えるJAXAの研究開発

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機首下に装備したセンサーの画像をパイロットがかぶったHMDに表示(JAXA提供)

ヘリコプターは、滑走路を必要とせず、ホバリングも可能な便利な空飛ぶ乗りものである。捜索救助、救命、消防などにおいて活用され、その有用性も広く知られている。しかし夜間、低空での任務飛行を昼間と同様に行うことはできない。低空での任務飛行においてパイロットが外視界から得る情報が、夜間は圧倒的に少なくなるためである。

宇宙航空研究開発機構(JAXA)では、センサーを組み合わせて夜間や低視程でのパイロットの視覚情報を補完する技術の研究開発“SAVERH”を島津製作所などと共同で2008年より進めてきた。

試作したシステムでは、ヘリコプターの機首にセンサーを装備し、そのセンサーで取得した画像に計器情報を重畳したものを、パイロットが装着したヘッド・マウント・ディスプレー(HMD)に表示する。センサーを内包するセンサーポッドはパイロットの頭の向きに追随して旋転するため、機体の真下などの画像を「床を透かして」見ることも可能である。

赤外線センサーをはじめとする複数の種類のセンサーにコンピューターグラフィックスによる地形を組み合わせることで、闇夜などにも良好な視界情報が得られる。

これまでに80時間の夜間飛行を含む計200時間以上の飛行実験を行い、周囲に障害物のない場所であれば、ホバリングや低空での飛行を夜間に実施できる見込みを得た。

一方で、限界や今後の課題も見えてきた。高性能なHMDを使用しても、人間の全視野角をカバーすることはできず、距離感などもつかみにくいため、昼間に得られるものと同クオリティーの映像を作り出すことは難しい。表示情報の工夫に加え、機体の自動操縦装置の利用や、パイロットの手順や訓練方法等を組み合わせることで、安全性を確保しつつ任務を有効に実施する手段を編み出していきたい。

航空技術部門 航空利用拡大イノベーションハブ 舩引浩平
91年科学技術庁航空宇宙技術研究所(NAL)に入所。パイロット=航空機システムにおけるヒューマンファクターの研究に従事。

日刊工業新聞2021年11月1日

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