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巨大な宇宙空間の地図作製に成功!「天文学×AI解析」の世界

近年、天文学の解析にも人工知能(AI)が使われるようになってきた。国立天文台などの研究チームは、望遠鏡で観測したデータをAIで鮮明化する手法を開発した。宇宙の質量の約80%を占める「暗黒物質(ダークマター)」に注目。暗黒物質に関する模擬データを使ってスーパーコンピューターで計算することで、ノイズを含まない観測データが得られた。宇宙初期から現在の宇宙の大規模構造を解明する一歩に近づくと期待される。

宇宙がどのような構造をしているのかは、その大半を占める暗黒物質が何かを調べる必要がある。だが暗黒物質を観測しても多くのノイズに埋もれてしまい、形状や性質などの情報が引き出せないという課題があった。

研究グループは暗黒物質のノイズを含む模擬データとノイズがない模擬データを約2万5000組用意し、AIに学習させた。それを基に天文学の解析専用のスーパーコンピューター「アテルイⅡ」でシミュレーションし、暗黒物質を含んだ巨大な宇宙空間の地図を作製することに成功した。

この地図を使うことで、これまで観測が困難だった暗黒物質の質量が銀河団の10分の1程度となる密度の低い銀河を調べられるようになった。今後は米ハワイ島のすばる望遠鏡が観測したデータに同技術を適用することで暗黒物質の詳細を調べるとともに、約1400平方度の宇宙の地図を完成させようとしている。

天文学では他にもAIを使った研究が進んでいる。これまでの観測データを使い、地球から4億3000万光年(1光年は光が1年間に進む距離)離れた位置に誕生して約1000万年しか経過していない「若い銀河」を特定できた。また、銀河が回転する方向や大きさなどからAIで銀河の種類を分類する手法の確立にも成功した。さらに大量の観測データを学習した装置から、新たな法則があるかを調べる「説明可能なAI(XAI)」を使い、天文学の新法則を発見する研究も進んでいる。

国立天文台の常田佐久台長は「専門家の中にはXAIを天文学に適用するのは不可能とする人もいるが、注目度は高い。天文学の分野ではビッグデータ(大量データ)とAIを使った研究は急速に発展するだろう」と笑顔を見せる。

天文学にAIが使われるようになったのはごく最近だという。これまで積み重ねてきた観測データから、新たな深宇宙の謎が解明できると期待される。(飯田真美子)

深層学習で観測データからノイズを取り除くと、暗黒物質の情報が得られる(統計数理研究所提供)
日刊工業新聞2021年10月29日

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