人工の流れ星を創る起業家、エンタメを通し科学に貢献したい

JAXAも期待するエール、岡島礼奈社長インタビュー

 真夏の風物詩と言えば空に打ち上がる大きな花火。今後は花火を見るように流れ星が見られるかもしれない。そんな夢をかなえるべく奔走するのはALE(エール)の岡島礼奈社長だ。2020年春にも地球周回軌道上で待機する超小型衛星から金属を含む粒を放出し、人工の流れ星を創出。広島・瀬戸内上空で流れ星が見られる計画だ。岡島社長にプロジェクトへの思いを聞いた。

 ―この世界に入ったきっかけは。
 「01年、東京大学の学部生の時にしし座流星群を見て、ふと『流れ星を作れるのではないか』と思った。長い時間がかかったが11年に起業した」

 ―現在の進捗(しんちょく)状況は。
 「現在、人工流れ星を作る装置を積んだ超小型衛星『エール』の初号機が地球周回軌道を回っている。今夏以降に2号機を打ち上げる予定で、組み立てや振動試験などを実施している」

 ―今までで最大の難関は何でしょう。
 「1月に宇宙航空研究開発機構(JAXA)の小型固体燃料ロケット『イプシロン』で打ち上げた初号機に関して、直前までJAXAが求める水準を満たしておらず審査に落ちる寸前だった。『もうダメか』と思ったが、多くのメンバーが協力してくれて、最終的にはJAXA側から『本当によくやったよね』と声をかけられるまでになった」

 ―今後の展開は。
 「現在の2・5倍以上となる1000―2000個の玉が放出できる3号機の開発を構想している。さらに流れ星の色の種類を増やしたり明るくしたい。さらに超小型衛星自体を地球の大気圏に落とし流れ星にすることも考えている。これはスペースデブリ(宇宙ゴミ)の対策にもつながるかもしれない」

 ―エンターテインメントを通し科学に貢献したいとお考えですね。
 「ベンチャーの事業でスマートフォンを利用したビジネスが多いが、スマホは全地球測位システム(GPS)などの基礎科学を基にした技術で成り立っている。人工流れ星というエンタメに興味を持った多彩な人材が集まり科学が発展すると考えている」

 ―人工流れ星の創出はどのような分野に役立ちますか。
 「人工流れ星を発生させる際に得られた高層大気のデータを利用すればロケットの輸送技術に応用できるかもしれない。高層大気のデータは科学者から技術者まで多くの人が興味を持っている。流れ星の光をカメラで観測し大気の組成を調べようとする新しい取り組みにわくわくしている」

【記者の目】
 大学で天文学を専攻した岡島社長には科学を応援したいという熱い思いがある。人工流れ星を作るのは炎色反応という現象で中学校の理科で習う範囲だが、実際の宇宙ではまだ知られていない科学の仕組みがあるかもしれない。エンタメと科学に共通するのは人々の好奇心。20年の人工流れ星の実験に多くの人が興奮している。
(冨井哲雄)

【略歴】おかじま・れな 08年(平20)東大院理学系研究科博士課程修了、同年米ゴールドマン・サックス証券入社。09年エルエス・パートナーズ設立。11年エール設立。理学博士。鳥取県出身、40歳。
【会社概要】▽所在地=東京都港区赤坂2の21の1、03・3248・1630▽従業員=23人(19年6月時点)▽設立=11年9月▽資本金=非公開


日刊工業新聞2019年6月12日

  

ファシリテーター紹介

記者・ファシリテーターへのメッセージ

この記事に関するご意見、ご感想
情報などをお寄せください。