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稼ぐ力際立つ東京エレクトロン。半導体製造装置の価値向上へカギになる財務指標

稼ぐ力際立つ東京エレクトロン。半導体製造装置の価値向上へカギになる財務指標

写真はイメージ

製造業の中で稼ぐ力が際立つ東京エレクトロン。2024年3月期までの中期経営計画で、売上高2兆円目標に対し営業利益率30・0%以上(21年3月期は22・9%)や株主資本利益率(ROE)30・0%以上(同26・5%)を最終目標に掲げる。付加価値の高い半導体製造装置を創出し「売上総利益を上げていく」(河合利樹社長)ことで、稼ぐ力をさらに高めていく。

同社の売上総利益率はおおむね40―42%で推移していたが、21年4―6月期は新製品の投入効果などもあり46・7%と向上。21年の半導体前工程製造装置(WFE)市場の成長率を約40%と試算する一方で、22年3月期の自社の新規装置売り上げは前期比46%増と予想する。半導体製造装置市場の著しい成長以上に販売を伸ばし、売上総利益増に結びつける狙いだ。ゴールドマン・サックス証券の中村修平アナリストはリポートで「さらに粗利率(売上総利益率)を拡大させていくことは可能」と見る。

ただROEを見ると、競合最大手の米アプライド・マテリアルズの38・52%(20年10月期)と比べるとまだ低い。装置の付加価値向上のカギを握る研究開発投資が売上高に占める割合は、アプライドの約13%(20年10月期)に対し東京エレクトロンは約9・8%(21年3月期)に留まっている。魅力的な商品を市場投入するためにも、国内証券アナリストは「比率を同じくらいまで高める必要がある」と指摘する。

一方、東京エレクトロンの自己資本比率は70・0%前後を維持し、21年3月期も71・1%と高水準を保っている。有利子負債は15年3月期以降ゼロで財務体質は超優良。

半導体業界は好不況の波が大きいのに加え、技術進歩が速い。装置メーカーは「売上高が落ち込む局面でも研究開発をコンスタントに行わないといけない」(笹川謙ファイナンスユニットジェネラルマネージャー)ため、不況時でも安定的に投資できる財務体質を築いてきており、今後も同水準を維持していく方針だ。

盤石な財務基盤をテコに投資を拡大し、さらに収益力向上に努めていく。

日刊工業新聞2021年9月30日

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