ダイヘンが開発、世界最速級の半導体ウエハー搬送ロボットがスゴイ
ダイヘンは真空環境下で世界最速レベルの高速搬送を実現した半導体ウエハー搬送ロボット「UT―VDW3000」を開発、受注を始めた。前工程の半導体製造装置に搭載し、装置内搬送で1時間当たりのウエハー処理枚数を同社従来品比30%向上の650枚を実現。供給不足にある半導体の生産能力を、装置を増やさず拡大するのに貢献する。年間販売で300台を目指す。
開発したロボットはデュアルアーム(双腕)構造で、300ミリメートルウエハーに対応する。アームの動作ストロークは620ミリメートル、ロボットの最小旋回径は730ミリメートル。真空下で高速プロセスが求められるイオン注入装置などを主なターゲットにする。消費税抜きの価格は780万円。
同装置などの世界市場は1000台以上と推定され、ダイヘンは提案を強化していく。
真空下では吸引式でウエハーを把持できず、ロボットのハンド部の上に載せる形で搬送する。高速搬送になればウエハーは振動で位置ずれの可能性が高まるため、振動の発生要因を徹底して見直した。
今回、ロボットの両アーム軸と旋回軸の計3カ所に直接駆動するダイレクトドライブモーターを搭載。アーム軸にACサーボモーターと減速機を使っていた従来機に比べ、振動を大幅に抑制した。ハンド上のウエハー滑りを抑え、微細な塵のパーティクル発生も防げ、生産性は高まる。
また、アームの駆動を樹脂製タイミングベルトから溝のない金属製ベルトに変更し、バックラッシュ(がたつき)要素をなくした。この結果、ウエハー搬送精度は従来のプラスマイナス0・2ミリメートルから同0・1ミリメートルに改善した。
ダイヘンは真空用を中核に半導体用クリーン搬送ロボットの品ぞろえを拡充する。生産はダイヘンテック(大分県杵築市)で行う。
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日刊工業新聞2021年11月9日