【決算一覧】解約率が高水準の携帯3社、課題の客単価をどう高めるか
携帯通信3社が2022年3月期の連結業績予想(国際会計基準)を据え置いた。21年4―9月期は携帯通信料の値下げが響いて全社が営業減益となったものの、金融・決済サービスや電子商取引(EC)などが伸長。今後もこうした非通信分野に力を注ぎ、22年3月期は営業増益を確保する計画だ。だが本業の通信事業では競争激化に伴い、解約率が高水準にある。既存顧客のつなぎ留めや客単価向上につながる施策の実効性が試される。
ドコモはNTTコミュニケーションズとNTTコムウェア(東京都港区)の2社を22年1月1日付で子会社化するが、会計処理や開示方法を検討中であるため、22年3月期の予想に2社の収益を織り込まなかった。ドコモの21年4―9月期は、通信事業が増収営業減益。コロナ禍で苦戦していたスマートフォンの販売が回復した一方、端末販促費用の増加や、通信料金引き下げが利益を圧迫した。
また、非通信の「スマートライフ領域」は減収営業減益だった。だが前年同期はポイントサービス「dポイント」の引当金の制度見直しが同領域の営業利益を約190億円押し上げており、21年4―9月期はその反動が出た。スマホ決済「d払い」の取扱高が前年同期比約65%増となるなど「やっと金融・決済分野で利益を出せる体質になってきた」(井伊基之社長)。
KDDIは金融のほか、法人事業が拡大。ソフトバンクも法人やECが伸びており、各社の非通信分野は堅調だ。今後は通信事業の収益改善が焦点となるが「解約率は3キャリアとも上がった状態。流動性が高まっている」(宮川潤一ソフトバンク社長)。既存顧客に第5世代通信(5G)への移行を促すなどして客単価を高めていく努力がこれまで以上に求められる。
日刊工業新聞2021年11月12日