なぜアマゾンは高い目標を設定するのか。イノベーションを生むマネジメントの秘訣

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アマゾンジャパン出身でaLLHANz共同代表の太田理加さん(右)と小西みさを(左)さん

チームとして成果を出すために部下をどのようにマネジメントすべきか、管理職の悩みは尽きない。足元では新型コロナウイルス感染拡大に伴ってテレワークが普及するなど働き方が大きく変わり、管理職はその力量が一層問われる環境になった。そこで、アマゾンジャパン出身で9月に『amazonのすごいマネジメント』を著したaLLHANz(東京都港区)共同代表の太田理加さんと小西みさをさんに、チームとして成果を出すためのアマゾン流マネジメント方法を聞いた。(聞き手・葭本隆太)

チームを作って強くする

―アマゾンで管理職が担うべき最も大切な仕事を教えてください。
 太田氏 チームを作って強くすることです。一人でできることは限られていますので、仕事はチームがなければできません。仮に強い1人のマネージャーがいなくなったとしても、円滑に動くチームを作るため、部下の育成や採用、仕事の仕組み作りに力を入れます。

―チームを強くするために重要なことは。
 太田氏 しっかりとした目標の設定です。それがなければ、育つ人も育ちませんし、チームのゴールも達成できません。

―部下の「しっかりした目標」はどう設定しますか。
 太田氏 まず、マネージャーの目標をチームのメンバーに共有します。それを基にそれぞれ作ってもらいます。その際には一般的な方法ですが、「SMART(Specific・Measurable・Achievable・Relevant・Time-bound)」に基づき、具体的かつ測定・達成が可能で、会社やチームの目標と関連しており、期限を設けた目標を作ります。

小西氏 アマゾンの目標設定で大切な点は「業務目標」と「行動目標」の二つがあることです。業務目標は売り上げなどの業務上で達成すべき目標。一方の行動目標は、アマゾン全社員の行動指針である「リーダーシップ理念(下)」をどれだけ発揮できたかを図る指標になります。

―アマゾンでは高い目標を設定する姿勢が評価されるそうですね。
 太田氏 高い目標を掲げることで、新しいアイデアを考える機会が生まれるからです。例えば、昨年は1000件の商品を品ぞろえしたから、今年はそれを2000件に倍増させようという目標を掲げると、同じ事をしていても達成できないでしょう。そこで、達成するために必要なことを考えます。それは新しい仕組みかもしれないし、ツールの導入かもしれません。もし自分でなくてもできる業務があるなら、それを請け負う新しいチームを作ることかも知れません。そうした解決策を考えることが大事で、それを考えることでイノベーションが生まれるのです。

目標を達成するための活動を一通り洗い出し、それでも達成できないのであれば、それは目標が違うのかもしれません。その場合は目標を修正します。

―実際にお二人の部下も自ら高い目標を設定していたのですか。
 太田氏 人それぞれですね。とても高い目標を設定する方もいますし、低すぎると思う方もいます。それはどっちが良いとか悪いとかではありません。低すぎる方は慎重に多様なリスクを想定している可能性がありますし、逆に何も考えずに高い目標を設定してしまっている人もいます。(マネージャーは)そうやって示された目標を基にコミュニケーションを取りながら、SMARTに基づく(適切な)目標に当てはめていきます。

心理的安全性を確保する

―目標の進捗はどのように管理するのですか。
 太田氏 マネージャーはチームメンバーそれぞれと週に1回30分の「1on1ミーティング」を行います。その際に進捗を確認し、仕事の悩みを聞き、解決方法を話し合います。マネージャーは仕事を任せますが、丸投げをしてはいけません。部下の仕事を把握して、目標の達成をサポートする上で、週に1回のチェックポイントは大事になります。

―部下とのコミュニケーションで最も大切にすることは。
 小西氏 安心安全な環境を作るということでしょう。悩みがあるのに、その声が上がらないのは企業にとって大きなリスクです。たとえ失敗しても、そこに理由や失敗による学びがあるのならマネージャーに理解してもらえると、部下に感じてもらえるような環境を作ることが、マネージャーがすべきことです。

―そうした環境であることを部下にどのように理解してもらうのですか。
 小西氏 とにかくコミュニケーションを取り、紳士にサポートする姿勢を示すことでしょう。また、チームとして多様な議論ができる場を整えることも大事です。経験の少ない人でも積極的に意見を出しているような場を作っておけば、新しく入ってきた人もそのチームを安全に感じて思っていることが伝えられます。

―アマゾンは男女だけでなく、国籍も含めて社員の多様性に溢れた企業かと思いますが、そうした属性によって部下とのコミュニケーションを変えることはありますか。
 太田氏 相手によってコミュニケーションの仕方を変えることはあります。ただ、それは年齢や性別、国籍といった表層的なものではなく、もっと「個」で、目に見えにくいそれぞれの価値観や性格を理解するということです。(そうした「個」は)やはりコミュニケーションを多く取らないとわかりません。

―新型コロナ感染拡大の影響でテレワークを導入する企業が増え、部下やチームの管理が難しくなったという声を聞きます。それに対応するアマゾン流の方法はありますか。
 小西氏 とにかくマネージャーがコミュニケーションの機会を積極的に作っていくべきでしょう。アマゾンではチームみんなで交流する機会を設けるため、誰かの誕生日会や歓迎会をオンライン会議ツールで開くなどの工夫をしています。

太田氏 アマゾンにはコロナ前後を問わず「コミュニケーションは多すぎて悪いことはない」という考えがあります。オンライン会議システムやチャットツールなどを活用して頻繁にコミュニケーションします。

―マネージャーからのコミュニケーションが多すぎると、部下に嫌がられることはありませんか。
 小西氏 アマゾンは日頃からコミュニケーションが活発だったので違和感はありませんが、確かにリモートワークを導入したから新たに機会を作ろうとすると、慣れる時間は必要かもしれませんね。もちろん「本当に仕事をしているのか」を監視するようなマイクロマネジメントになると部下も嫌でしょう。一方で、上司に「困っていることはないか」や「自分にできることはないか」と声をかけられるのは嬉しいのではないでしょうか。

太田理加 aLLHANz合同会社共同代表。大学卒業後、大手石油会社、国際物流会社DHLでマーケティング担当。英国でMBAを取得後、2002年にアマゾンジャパン入社。新規ビジネス立案・立ち上げを担当し、立ち上げたビジネスの事業責任者を歴任。15年9月に退社し、定額制ジュエリーレンタルサービス「スパークルボックス」を立ち上げる。20年3月にaLLHANz合同会社共同代表に就任
小西みさを aLLHANz合同会社共同代表。ソフトバンク、セガなど東証一部上場企業で10年以上の企業広報・海外広報の経験を経て2003年にアマゾンジャパンの広報責任者に就任。同社の黎明期から急成長した13年間、amazonのブランド価値向上に貢献。17年1月にPR・ブランディングコンサル会社AStory合同会社設立、代表に就任。20年3月にaLLHANz合同会社共同代表に就任

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葭本隆太
デジタルメディア局DX編集部
ニュースイッチ編集長

管理職1年目の私としては勉強になる話ばかりでした。特に「高い目標を設定することで新しいアイデアを考える機会が生まれる」という指摘には「なるほど」と膝を打ちました。一方、お二人の話を聞けば聞くほど、アマゾンの管理職はとても仕事が大変そうだなとも思いました。

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