中学生の教科書でプラスチックの記述が大幅に増加した深い事情

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プラの利点と問題の両方を正しく理解してもらうことが業界の発展につながる。プラ工連は記述増加を求め、出版社5社にアプローチした

2021年の教科書改訂で、中学3年生の理科教科書にプラスチックの記述が大幅に増加している。日本プラスチック工業連盟(プラ工連)によると、プラを記載したページは4社の教科書合計で改定前の3倍近くとなった。背景には環境意識の高まりに加え、プラを深く知ってほしいという業界の思いがある。(梶原洵子)

「プラスチックの問題点もしっかり書いてほしい」。プラ工連の加藤英仁専務理事は、出版社の担当者にこう訴えた。学習指導要領改訂に合わせて、プラ工連は18年初めから教科書のプラ記述増加を大日本図書などの出版社へ働きかけてきた。

プラ工連はプラ産業の代表組織で、本来はプラの良さをアピールする立場。だが、多くの人に利点と問題の両方を正しく理解を深めてもらい、海洋プラ問題などを解決していかなければ、業界は発展できないと認識する。また、今の教科書は写真や実験などの情報が豊富で魅力がある。「教科書で学び、1人でも多く化学に携わってほしい」(加藤専務理事)という思いもあった。

ただ、当初の出版各社の反応は芳しくなかった。中3で学ぶ理科の内容は増えており、「『プラのページ数は増えない』という回答だった」(同)。プラ工連は18年に作成した資料集を出版社や東京都や近県の学校に提供したほか、他団体と要望書を提出。教科書作成期間の19―20年は過度の影響とならないよう、出版社への連絡は遠慮していた。

半ば諦めていたところ、最も多いところで啓林館の教科書は改定前の2ページから11ページに増えていた。「海洋プラ問題などの社会的な影響もあるが、我々がやったことも無駄ではなかった」(同)。教科書にはプラの特性や用途に加え、プラの問題点や資源循環も盛り込まれた。

またプラ工連は日本化学工業協会などの化学系3団体と共同で、以前から中学の理科教員向けに工場見学会などを開催し、教員らと関係を深めている。

今後求められる循環型社会は消費者の参加なしに実現できない。プラ工連は引き続き教員や出版社との情報交換を続ける。地道な活動から、社会と化学のつながりを強化する。

日刊工業新聞2021年11月5日

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