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グッドデザイン賞に2つの新しい防災、『贈る』と『溶け込む』

10月7日夜、千葉県北西部を震源とする地震があり、東京・足立区や埼玉県川口市などで震度5強の強い揺れを観測した。東京23区で震度5強の揺れを観測したのは2011年に発生した東日本大震災以来だ。今後30年以内に70%の確率で「首都直下地震」が発生するといわれており、内閣府の想定によると、東京では最大震度7の激しい揺れになるとされる。近年は地震だけではなく、記録的豪雨による水害や大型台風のように災害が頻発している。昨日も茨城県南部を震源とする地震が発生しており、次にいつ起こるのかわからない災害に対応するためには、日ごろからの備えが肝心だ。

日本デザイン振興会は、グッドデザイン賞の2021年度受賞結果を10月20日に発表した。防災用品もグッドデザイン賞を受賞しており、防災への関心の高さや必要性がうかがえる。

贈る防災

防災・災害関連を中心としたサービスを提供するベンチャー企業のKOKUA(泉勇作、疋田裕二共同代表)の商品、「カタログギフト [LIFEGIFT]」は、贈れる防災用品としてプレゼントしたくなるようなデザインの防災用品を一冊のカタログギフトにまとめている。防災用品は、実際に災害を経験しないと購入へは至らないだろう。そんな中、「あなたの無事が、いちばん大事」というメッセージが込められた、日常生活に調和する防災グッズを掲載。モノだけではなく「相手を想う心」にフォーカスし、防災に興味がない人にも対策を進めるきっかけを提供する。災害が頻発する中で、防災準備が進んでいない社会課題の解決を目指したデザインだ。

カタログの中には19枚のカードが入っていて、1枚1枚カードを確かめていく「ワクワク感」と共に「特別なものをもらった」という体験ができる。消火器、ヘルメット、防災セットなどの災害時に役立つ防災用品から、防災笛やもしもの時はバッテリーになる小物入れのように普段から持ち歩けるものなど、多岐にわたる商品を掲載した。出産、結婚、入学や入社のお祝い事や、遠方に住む家族へのプレセントなど、幅広いシーンでの利用が可能だ。

日常空間に溶け込む防災

災害用備蓄スタンドのBISTAは、従来のように防災用品を倉庫やロッカーに置くのではなく、ロビーやエントランス、応接室など、あえて日常的に人が行き交う空間に置くことで誰でも普段から防災を意識することができる。防災用品の研究と商品開発を行うファシル(八木法明社長)から発売されており、防災用品がオールインワンで揃ったスマートなデザインだ。

一段目には高速充電マルチチャージャやミニカセットコンロ、二段目には携帯トイレや圧縮トイレットペーパー、三段目には簡易ライトやアルミポンチョ、マスクなどが入っている。一台で50人分の支援物資として活用できる。

自分のための「自助」の備えだけではなく、誰かと助け合う「共助」の備えの普及を目指した地域貢献型の災害用備蓄スタンド。シンプルで日常空間に馴染むデザインのため、オフィスに限らず、街中やカフェのように生活に密着した場所への設置が可能だ。

災害はいつ発生するかわからない。だからこそ自分自身、家族、たまたま居合わせた人を守るために、街全体での対策や防災を贈ることで意識していくことが防災への第一歩となる。

カタログギフト [LIFEGIFT]
いのちをまもるカタログギフト LIFEGIFT

BISTA
災害用備蓄スタンド BISTA
鈴木奏絵
鈴木奏絵 Suzuki Kanae デジタルメディア局コンテンツサービス部
社会人になり実家を出てから何度か地震に合いましたが、10月7日ほど大きく揺れたのは初めてです。一瞬で小学校6年生の時に経験した東日本大震災の揺れがフラッシュバックしました。「防災」というとついつい後回しにしてしまいがちですが、備えあれば患いなし。今後地震が起きた時に最悪の状況にならないよう、備えておくことが重要だと改めて感じました。近頃は寒くなってきたので、外で被災した時に備えてアルミブランケットを持ち歩くようにしています。地震大国の日本だからこそ、今回グッドデザイン賞を受賞したような防災グッズが発展しているのかもしれません。小学生ながらに地震と津波の恐怖をしっかりと感じたあの日。大人になったいま、自分の経験を下の世代に伝えていくことも防災の第一歩につながることを実感しています。

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