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難しい多品種小ロット生産の自動化、実現した自動車部品メーカーの気づき

難しい多品種小ロット生産の自動化、実現した自動車部品メーカーの気づき

EGRクーラーの「コア」部分の生産ライン。多軸ロボットがロウ付けをしている

東京ラヂエーター製造は、生産工程を見直しロボット運用を拡大した。多品種小ロットの製品を扱う工程はロボット化が難しい。投資に見合う量を確保できないからだ。しかし、そういった製品同士でも共通パーツで量を確保できる。同社は多品種小ロットの排ガス対策部品の共通パーツの生産でロボット化を進めた。2025年度までの中期経営計画では工場のスマート化を柱の一つに据える。工場の作業員が最新設備に対応できるよう社内教育も充実させる。(日下宗大)

東京ラヂエーター製造がロボット化に着手したのは「EGR(排気ガス再循環装置)クーラー」と呼ばれる部品。排ガス中の窒素酸化物(NOx)を減らす役割を持つものだ。

「なかなか自動化しにくい」。仁科芳夫執行役員生産本部副本部長は、工場のスマート化の同社ならではの難しさを説く。同社はトラックなどの商用車向けの部品を主に手がける。商用車は用途ごとに部品の仕様が異なるためだ。

自動化は量が出る乗用車向けのEGRクーラーで先行着手して成功した。そこで商用車向けへの応用を目指し工程を見直した。

ただ、やはり商用車向けは多品種小ロットの壁にぶつかった。EGRクーラーにつながるパイプ位置が商用車の用途ごとに異なる。このままでは自動化のメリットを出せる量が確保できない。しかしEGRクーラーの「コア」と呼ばれる部分は用途に左右されにくいことが分かった。

「これはいける」(仁科執行役員)。1年弱でロボット化ラインでの製品出荷にこぎ着けた。

多軸ロボットでラジエーターを検査する

具体的にはコアの組み付けからロウ材塗布までの工程を自動化した。多軸ロボット4台を導入して、インナーフィンなどコアの構成品の組み付けや、ロウ付けを行う。ロウ材の使用量も自動化前と比べて半分ほどになったという。

エンジンの冷却放熱器「ラジエーター」の工程はさらに自動化の難易度が上がる。「ラジエーターの方がEGRクーラーよりも品番が多い」(同)からだ。多品種小ロットという高い壁が立ちふさがる。

しかし同社ではラジエーターの生産でも自動化に挑戦した。各工程を精査して、検査工程に着目。カメラ付きの多軸ロボットがラジエーターの外観をチェックする。

同社は25年度までの中計期間でロボットやIoT(モノのインターネット)技術を使った工場「スマートファクトリー」に向けた取り組みを進める。生産工程のほかにも、倉庫管理などの物流領域などにも新システムの導入を進める。

さらに作業員が先進技術に対応できるように、国内外の工場作業員を対象にした全社共通の教育プログラムを策定している。

工場のスマート化は本社工場(神奈川県藤沢市)から始めて、海外拠点でも展開する方針だ。仁科執行役員は「人手不足対応だけでなく、品質向上や競争力の強化につなげる」と気を吐く。

日刊工業新聞2021年10月12日

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