JAXA・パナソニック・清水建設などが考案、6Gを生かす都市像の全貌

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コロナ禍で東京などへの流入は弱まったとはいえ、依然として大都市圏は過密状態だ。観光地などで休暇を楽しみながら働く「ワーケーション」など地方への移住策を各自治体が推進するが、定住を促進するのは容易ではない。そんな中、宇宙航空研究開発機構(JAXA)や情報通信研究機構では、各世帯でさまざまなインフラが対応し、どこにいても自分の好きな生活を楽しめる社会を構築しようとしている。早ければ2050年にもそんなライフスタイルが登場するかもしれない。(飯田真美子)

新型コロナウイルス感染症拡大の影響で人々は自粛生活を余儀なくされているものの、食事や日用品などは出前や宅配で、都市部はどこでも配達してもらえる。これに対し、地方では一部の地域でしか対応できないなど、コロナ禍は都市と地方の格差を改めて見せつけた。

JAXAと情通機構は、パナソニックや清水建設などと共同で、これらの課題を解決するような新たな都市像を考案した。各世帯の中で水やエネルギーを自給し、食料など必要なものは自動で輸送するシステムを構築するというものだ。さらにウェブ会議システムであって顔と音声だけでなく、においなど五感すべてを感じられるような仕組みを作り出す。そうすれば住む場所によらず、例え閉鎖空間であっても快適な生活が送れる。

JAXA航空技術部門で同プロジェクトのリーダーを務める上野真氏は「イメージは国際宇宙ステーション(ISS)の地上版。JAXAの有人宇宙技術部門が研究する宇宙空間に生活インフラを丸ごと移設するという知見をプロジェクトでも生かしたい」と意気込む。

JAXAでは、同プロジェクトの中でも物資の自動輸送システムの構築に関する技術開発を担う。今でも航空機やバイクなどを使えば、どこにでも物資を輸送しやすい環境が整っている。だが輸送距離約200キロ―1000キロメートル、物資の重量約10キロ―1000キログラムを満たすような自動輸送手段は確立されていない。

そこで同条件を満たすような航空機や蓄電池などの研究開発に取り組む。小型航空機の研究の一環で、地図情報や気象情報から運航管理できる飛行ロボット(ドローン)の開発などが進んでおり、40年までに無人輸送機の遠隔操作や、天候によらず飛行できる仕組みを確立する。

情通機構ではウェブ会議などで五感を感じる仕組みの実用化を進めている。ホログラムや嗅覚情報などの基礎技術を研究しており、情通機構発のベンチャーは嗅覚情報を伝えるための製品を開発した。固形香料6種類のカートリッジを装填しおり、画面に表示された映像や音響に合わせてカートリッジを高速に切り替えながら噴射する仕組みだ。

これらの五感を伝送する通信技術は第5世代通信(5G)の次の通信技術(6G)にもつながる要素技術となる。40年には伝送できる味覚や嗅覚情報の種類の増加や触覚を伝える技術を確立する。

今後、日本は過疎化の進展でこのままでは地方の衰退は避けられない。同プロジェクトに関わる情通機構の阿部侑真氏は「30年後の50年にも、どこにいてもわくわくした生活を送りたい。そのためにも新たな技術開発が重要」と展望する。

日刊工業新聞2021年9月20日

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