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与信管理にAIを導入したニコスが感じた変化

三菱UFJニコスは2018年、経営企画本部内にデジタル企画部を立ち上げ、同部が社内への人工知能(AI)導入を推進してきた。19年には、クレジットカード会員の与信管理業務やコールセンターの業務にAIを導入した。与信管理業務の一部では、会員の利用実績を基に、利用限度額を引き下げるかどうかの判断にAIを活用している。一定の特徴のあるグループごとではなく、個々の会員に即した判断ができるようになったのが特徴だ。

同社はAI製品として高評価の米データロボットのAIプラットフォーム(基盤)「データロボット」を導入した。導入支援サービスの実績が豊富な日鉄ソリューションズのコンサルティングを受けた。

主な導入対象が与信管理業務だ。担当部門は、各会員の与信枠の金額が適正かを常に観察し、判断している。利用実績の中で支払い遅れや未入金があった会員には、利用限度額を引き下げる措置を取ることがある。判断には外部の信用情報も活用するが、従来は一定の特徴のあるグループごとの一律な対策になりがちだった。

AIには会員の最大1年半分の利用実績のデータを学習させた。AI導入後は、会員単位でスコアリングし、リスクの高いスコアの会員は利用限度額を下げる、低いスコアの会員は観察を続けるといった対応が可能になった。宮崎友和デジタル企画グループ次長は「マス別だったのが人別にとらえられるようになった」と変化を説明する。

コールセンターでは、支払いが遅れている会員に電話をかける場合、どのような会員に電話すれば支払いにつながるか、過去の実績をAIに学習させた。優先順位を付けたことで、電話をかける回数を従来より2割減らすことができた。問い合わせを受ける側にもAIを導入し、繁忙期の電話を受ける回数を予測し、人員配置に生かせた。

このほか、カードの不正利用検知にも部分的に活用している。試行段階で、活用範囲の拡大を見据える。

データロボット以外のAIも活用する。債権回収に関する会員からの問い合わせにAIが自動回答する仕組みを本格化させていく。

今後は、デジタル企画部が社内でどのような業務にAIの利用が可能かを提案できる体制を目指す。カギは部内の人材育成だ。人員が日鉄ソリューションズのコンサルタントから学ぶなどしてAIの知見を深め、各部門に助言できるようにする。(戸村智幸)

日刊工業新聞2021年10月15日

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