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がんセンターなどが明らかにした「8K腹腔鏡手術システム」の有用性

国立がん研究センター中央病院とNHKエンジニアリングシステム(東京都世田谷区)などの研究チームは、8K技術を用いて開発した腹腔鏡手術システムの医学的有用性を明らかにした。遠隔地でも手術状況を詳細かつリアルタイムに把握できる環境を構築。遠隔手術指導を加えることで外科医の内視鏡技術が向上する。豚を使った実証実験で手術時間が短縮することを確認した。遠隔手術指導の普及で外科医が偏在するなどの課題解決につながると期待される。

研究チームは手術室に見立てた千葉県内の動物実験施設と手術指導室に見立てた京都府内の施設を使い、10月下旬に実証実験を行った。豚の直腸切除術のリアルタイム映像を、光ファイバーや第5世代通信(5G)などのブロードバンドを使って低遅延でライブ配信し、外科医3人による手術に対し、遠隔指導がある場合とない場合での内視鏡手術技術の改善度を評価した。

その結果、8K内視鏡映像に遠隔指導を加えた場合、内視鏡技術が向上した。手術時間は遠隔指導がない場合と比べて約1時間短い2時間程度まで短縮できた。映像の伝送速度は毎秒80メガビット(メガは100万)。遅延時間は約600ミリ秒で、遅延を感じないことを確認した。

研究チームは12月をめどに遠隔手術指導の下で外科医の人数が通常の3人から1人減らした場合でも質の高い腹腔鏡による直腸切除術が実施できるかどうかを確認する。実証実験の結果を踏まえ、医療機器としての承認取得に向けた計画を2021年度中に策定する予定。22年度以降に人を対象とした実証実験も検討していく。

日刊工業新聞2021年11月2日

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