電動化時代に一手、日産が構築した新車開発のコスト減らす仕組みの全容
日産自動車は新車のデザイン段階から調達先の部品メーカーを選ぶ仕組みを構築した。新車開発の初期段階から意見をすり合わせ、図面完成後の変更を最小限に抑えながら、コストや品質の改善につながる工夫を検討する。デザインは新車のコンセプトを具現化する重要なプロセスで、外部との情報共有は珍しいとみられる。車の電動化などで開発コストが膨らむ中、開発の上流工程から部品各社の声を反映し、1台当たり利益の最大化を図る。
車の骨格や内装などの主要部品を対象に調達先を早期に選ぶ取り組みを始めた。調達時期は車種により異なるが半年から1年程度は早まる見込み。新車のデザインを含めた開発の初期段階から部品メーカーの担当者が参加する仕組みも構築し、デザインや生産性を追求した部品などをつくり込む。設計精度も高め、図面完成後の設計変更も削減する。
従来はデザインや図面をほぼ固めた段階で調達先の部品メーカーを選定していた。そのため部品各社から改善提案があっても設計変更の余地が限られ、コストや品質などをつくり込むための十分な機会が失われていた。
自動車業界ではCASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)への対応で開発コストの増加が続く。日産は販売の量より質を追求する構造改革に取り組む中、新車1台当たりの利益を高めるためにも取引先(サプライヤー)との協業の強化が必要と判断した。
2年ほど前から新車の開発プロセスの見直しに着手した。部品メーカーの声を最大限生かすため、秘匿(ひとく)性が求められるデザイン開発の段階から連携する仕組みを構築し、2021年度から本格的に導入した。つくりやすさの追求などにより新車や部品の生産性が高まり、日産と部品メーカー双方の収益改善も見込む。
日刊工業新聞2021年10月29日