オリックスが高収益型の事業構造に変えるために重視する二つの財務指標
オリックスは10のセグメントを持つ多角経営を展開している。2008年のリーマン・ショック後、リスクを取りつつ、より高収益型の事業構造に変えていく中、財務面ではD/Eレシオ(負債資本倍率)と自己資本利益率(ROE)の二つの指標を重視してきた。財務の健全性と経営の効率性という相反する指標を両方良くする方針だ。
同社はリーマン・ショック後、リースやローンなど金融事業から再生可能エネルギー事業、プライベート・エクイティ(未公開株、PE)投資などに軸足を移し、利益を上げてきた。矢野人磨呂執行役財経本部長は「リスクが高い事業にシフトする分、財務の健全性を高めようとしてきた」と説く。
企業の短期的な支払い能力を示す手元流動性は直近の底である09年3月期の7305億円から、短期よりも長期の借り入れや社債発行を増やすなどし21年3月期は1兆1515億円に高めた。1年以内に返済期日が来る債務(借り入れ金や社債など)を上回る数値であり、非常時にも十分対応可能だ。手元流動性を高めたことなどで格付けが良くなり、支払利息を下げることができた。
またD/Eレシオは10年3月期の3・4倍から、21年3月期には1・6倍に下げた。大和証券の渡辺和樹シニアアナリストは「D/Eレシオを下げる中で利益もしっかり出している」と評価する。
ただ一方で、もう一つの指標であるROEは10年3月期の3・0%から18年3月期には12・1%まで上昇したものの、その後は低下。新型コロナウイルス感染拡大でホテル・旅館、航空機リース、空港運営が落ち込み、21年3月期は6・4%だった。矢野執行役は「いかに11%に戻すか」と述べ、ROEの改善を喫緊の課題とする。
足元の市況は「買うよりも売る方が良い状況」(矢野執行役)と見ており、投資先の売却が多くなりそうだ。オリックスは投資先が成長して高値になれば売却し、得た資金で新しく投資するサイクルは得意技と言える。「割安な時に出資し、価値を高めて売却する目利き力が強みの源泉」(渡辺大和証券シニアアナリスト)であり、資本効率を再び高めていく。