トヨタもオンライン商談導入、自動車販売のネット活用はどこまで進む?

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「BMWオンライン・ストア」のサイト画面

自動車販売でインターネット利用を積極化する動きが相次ぐ。ビー・エム・ダブリュー(東京都千代田区)はネットで購入手続きが完了するサービスを開始し、トヨタ自動車はオンラインで商談できる仕組みを導入した。新型コロナウイルス感染症拡大で、消費者の非接触ニーズが高まっていることが背景にある。海外と比べてネット活用が遅れていると言われる日本だが、コロナ禍を契機に車という“大物”にもネットの波が押し寄せる。(日下宗大)

限定モデルで刺激 BMW、若年層の閲覧増に手応え

インターネットを通じて車が購入できる「BMWオンライン・ストア」を7月末に開設したビー・エム・ダブリュー。担当の教野猛営業ディビジョン エレクトロ・モビリティ・マネジャーは「2019年からオンライン販売の仕組みは手を付けていた。コロナ禍でそれが加速した」と話す。

オンラインストアの登録者は約400件で、車の購入申し込みは14日時点で15件あった。オンラインストアでしか買えない限定車もそろえるなど、購買意欲をそそる仕掛けを打っている。

注目は閲覧者の年齢層だ。開設以来、現在までのアクセス数は1万件。そのうち半分を20―30代が占めた。「ブランドの新しいタッチポイントになっている」と教野氏は手応えを感じている。

というのもBMWの主要顧客層は50代半ば。コロナ禍以前でもBMWのショールームを訪れることが少なかった若年層にオンラインストアを通して早い段階でブランドの世界を感じてもらう。

購入にすぐ直結するわけではないが、「若年層にアクセスしてもらうだけで価値がある」(教野氏)。

対面時間短縮 日産・トヨタ、見積もり・チャット相談

オンラインを活用した非接触の販売活動は広がりを見せる。日産自動車は6月、車の購入相談に対応する「オンラインチャット」サービスを本格導入すると発表した。販売店での車購入の商談の前にオンライン上で見積もりや試乗、購入プランなどの問い合わせに対応する。

トヨタは5月末から新車購入の際に消費者が、オンラインで見積もりなどのやりとりを販売員とできるようにした。7月下旬時点で販売会社の約9割に当たる約250社が導入した。

日産の「オンラインチャット」サービス

以前からネットで見積もりシミュレーション自体はできた。今回はそれをもとに販売店側とチャット形式で購入に向けた商談をできるようにした。

客からは「店に足を運ぶ時間を省くことができた」や、新型コロナ感染予防の観点から「安心感を得られる」といった声があるという。販売店側でも業務効率が上がったという効果も見られた。

ただ米国のように見積もりから納車までオンラインで一気通貫のサービスではない。決裁などの最終手続きについては店頭で対面にて行う。自動車ローンや当局への手続きなどの面で、すべてをオンライン化するハードルは低くない。

中古車販売でもネット活用は広がっている。オリックス自動車(東京都港区)は9月から中古車販売事業でオンライン商談を導入した。タブレットやパソコンなどで中古車の状態を写した画像などを画面共有したりして説明でき、客は安心して中古車を選べる。他社でも中古車販売店「ガリバー」や中古車検索サイトの「グーネット」、「カーセンサーnet」が導入している。

中古車事業の拡大を狙うトヨタは9月、中古車をオンラインで購入できるサービスを始めた。トヨタ販売店が取り扱う一部の中古車について、見積もりから契約までオンラインで完結する。初年度に同サービスで1600台を販売し、将来は年5万台を目指す計画だ。

日産の「デイズ」

以前から各社とも自動車販売においてネット活用に取り組んできた。そこに新型コロナの感染拡大が重なった。

「新しい生活様式」でリモート化が浸透しつつある今、消費者側でオンライン販売などが受け入れやすくなり、サービスの拡充が加速している。

変わる消費行動

新型コロナの感染拡大が収束した「アフターコロナ」時代は、自動車に限らずネットを使った販売やサービスが消費者への訴求という点で重要度が増す。

非接触ニーズの高まりもあり、ネット購入は全世代で浸透してきた。auコマース&ライフ(東京都渋谷区)が7月に公表した消費行動に関するアンケート(ネット調査)によると、緊急事態宣言解除後も6割以上が「外出が不安」と回答。三井住友カードなどの消費行動の分析では高年齢層でも今後、電子商取引(EC)など「デジタルでの消費が定着する可能性」を指摘する。

高額出費となる自動車の購入などでネットの活用を定着させるには、さらなる工夫が必要だ。オンラインとリアル店舗のハイブリッド型の販促方法も一つの手だ。

オンラインサイト限定の購入特典の充実も欠かせない。コロナ禍で高まったネット消費をどう取り込むか、各社の競争が激しくなりそうだ。

日刊工業新聞2020年9月22日

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