【ディープテックを追え】ロボットが作る”東大産”イチゴ
HarvestX(東京都文京区)はイチゴなどの果菜類の自動栽培、収穫を行うロボットを開発している。屋内で人工的に作物を栽培する「野菜工場」は、生育に必要なLEDなどのコストダウンもあり広がりを見せている。だが、現在の中心はミツバチの受粉を必要としない葉菜類が中心。同社はミツバチの働きを代替するロボットで野菜工場に新たな可能性を提示しようとしている。
東大内にラボを設置
現在、東京大学内にイチゴを栽培するラボを開設。ラボにて自動で栽培や収穫をするロボット「XV1」の機能実証を行っている。ロボットの特徴は画像認識アルゴリズムだ。カメラを通じて、イチゴの状態を認識し、人間の脳のネットワークを模した「ニューラルネットワーク」で処理する。例えば、イチゴの成熟度合いを認識し、果実が熟れる前に収穫する。市川友貴社長は「現在の制御システムで95%ほど判定できる」と自信を見せる。
ミツバチの「デメリット」を解消
通常の果菜類の栽培では、ミツバチが受粉を媒介することで果実が実る。ただ、ミツバチの飼育は温度管理などの点から難しく、コストも高い。また、受粉確率が5割から8割とも言われ、確実ではない。屋内での栽培を行うのであれば、衛生上の観点から無菌状態にすることが望ましい。地球温暖化の影響でミツバチの種類や活動が鈍っているなどの報告もある。様々な面から野菜工場でイチゴなどの果菜類を生産する場合、ミツバチを利用しない形を模索する必要がある。
そのため花粉を付着させるブラシも工夫を凝らした。市川社長は「花粉をノズルから吹きかける方式や超音波でおしべを揺らして受粉させるなど様々検討したが、今のブラシの形に落ち着いた」と話す。同社はブラシで花粉をめしべにつける。現在もイチゴ生産者はミツバチで受粉しない際に、ブラシで花粉をめしべにつける。その業務をロボットで自動化した形だ。ミツバチとの純粋な比較していないが、「今後は受粉確率を向上させていく」(市川社長)。
食品加工に狙い
設立は2020年8月と日は浅いが、イチゴを食品加工する企業などからの問い合わせが相次ぐ。加工を担う工場の近くにイチゴを生産する施設を置くことで、品質の向上や加工品の安定供給が可能になる。同社はロボットで自動化することでミツバチの維持費や人件費を抑えつつ、品質を一定にできる点を訴求する考えだ。
製品の量産は早くて22年度を予定。従来ロボットの価格は2000万円とされるが、同社は量産時で5分1ほどの価格で納入する計画だ。海外への展開を狙う。また、今後はトマトやメロンなどイチゴ以外の作物を栽培するロボットの開発にもチャレンジしたいという。
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