「データの宝庫」総合商社がDⅩ人材の育成に注力

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総合商社がデジタル変革(DX)に向けた人材の獲得や育成に動き始めた。住友商事はグループ全体でリーダーポジションの「DX推進人材」を2026年までに1000人規模に増やす。三井物産はアジアでDX人材の採用を強化する。総合商社の幅広い事業領域はさまざまなデータを得られる「現場」だが、それを生かせる専門知識を有する人材の確保が課題だ。(森下晃行)

金属やエネルギー、食品など多くの分野でサプライチェーン(供給網)に参画する総合商社。川上から川下までの効率的な情報共有や新ビジネス創出を目指しDXを進める。一方、デジタル技術に深い知見を持つ人材はITやコンサルなどの業界に多い。「人が財産」と言われる商社だが層が厚いとは言えず、各社は採用や育成に奔走している。

各社共通して研修による社員の知識底上げに力を入れており、三菱商事はDX案件の早期実現を目指し「DXアクセラレーションプログラム」を21年度から実施している。年次や資格を問わず、DX案件を担うリーダー候補や新規プロジェクトの立案担当者が対象。入社3年目の社員にデータ分析の基礎研修なども行っている。

伊藤忠商事はウイングアーク1st(東京都港区)やブレインパッドとの人材交流でDXの知見を蓄積していっている。

また人工知能(AI)の開発者やデータアナリストといった専門家の確保は急務で、外部人材の獲得競争が激しくなっている。

住友商事は完全子会社で専門人材を抱えるインサイトエッジ(IE、東京都千代田区)が有望な候補者をスカウトする。同社の小久保岳人最高経営責任者(CEO最高経営責任者)は「技術に造詣の深い人間は取り合いになっており、供給が追いついていない」と指摘する。

三井物産はアジアでの採用を強化しており、デジタル総合戦略部長の真野雄司執行役員は「欧米の人材より処遇や任用の面で当社に魅力を感じてもらえる場合が多い」と言う。20年度はグループ全体で5人採用した。

19年に入社し、現在はヘルスケア分野のDXに従事するアジア・大洋州三井物産のジャヤラジ・カンダンDXアーキテクトは「さまざまな産業での実績が成長の機会に繋がると感じた」ことを入社理由に挙げる。

真野執行役員は「デジタルはツールではなく環境」と指摘し「DXができる面白い現場がたくさんある」と強調する。専門人材に対し、広範な事業分野とビジネスの「現場」という商社の特徴を魅力として訴求できるかが問われる。

失敗パターンから学ぶ 製造業AI導入のカギ 〜AIプロジェクトのリベンジを目指して〜

日刊工業新聞2021年10月13日

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