稼ぐ力を強化する住友ベークライト、「ROIC」を独自アレンジした狙い
住友ベークライトは2021年度からの3カ年の新中期経営計画で株主資本利益率(ROE)10%(20年度は7%)を経営目標に掲げ、稼ぐ力を強化している。日々のコストコントロールを徹底するほか、投下資本利益率(ROIC)を独自にアレンジした指標を導入するなどし、収益力を高めていく。
「汎用品のボリュームで勝負する会社ではない」(中村隆取締役専務執行役員)として、ニッチトップな高付加価値分野に注力して着実に収益を上げていく方針の一方で、低採算・不採算事業の改善や開発効率の向上なども進めている。ただ「高機能プラスチックの収益改善の遅れなどからもROE10%は厳しい」(吉田篤みずほ証券シニアアナリスト)と指摘する声もある。
住友ベークライトは社外的な経営指標であるROE目標達成のためにも、20年度に社内の管理指標として新たに導入したROICを本格的に活用していく。スペシャリティーケミカルを手がけているため事業部が細分化されており、事業部ごとの効率性など投資対効果の“見える化”が課題だった。
本来は税引き後営業利益を用いるところ、分子に事業利益を据えるなど一般的なROICを同社独自にアレンジしたもので、事業部門別に算出する。これにより、事業の特質に合わせて棚卸し資産回転率や売り掛けや買い掛けなどが適正かどうかなどを判断し、改善点の見極めにつなげていく。
同社は20年10月に人工透析や輸血関連に強みを持つ医療機器メーカー川澄化学工業を約270億円で買収。400億円台を維持していた有利子負債が20年度は767億円にまで増加したものの、吉田シニアアナリストは「川澄化学工業はキャッシュリッチな企業。住友ベークライトの財務がそこまで大きく悪化することはないだろう」と財務体質そのものは健全と見ている。
中計期間中に営業キャッシュフロー600億円程度を確保する計画。生み出したキャッシュは有利子負債の返済に充てるとともに、効率よく投資を行い稼ぐ力の強化を急ぐ。