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知っているようで知らない、タンパク質とアミノ酸。その役割と働きとは

おすすめ本の抜粋「トコトンやさしい人体のしくみの本」

体の中で重要な役割をするタンパク質

体の中で最も重要な役割をしているものの1つにタンパク質があります。タンパク質はアミノ酸が長くつながった鎖のような構造です。ヒトの体では20種類の異なったアミノ酸が利用されています。この中から2個がつながるだけでも400種類にもなりますが、通常は数千から数万、大きなものでは1億を超えるアミノ酸がつながってタンパク質を形成しています。つまり、タンパク質としての多様性は天文学的な数になるのです。

アミノ酸の基本構造は、片方に「アミノ基(-NH2)」、もう片方に「カルボキシル基(-COOH)」がついています。アミノ酸が2つつながるとき、-NH2と-COOHから「水(H2O)」が取れて、-NH-(C=O)-という形になり、非常に安定した鎖ができます。

20種類のアミノ酸のうち、11種類は体内で合成できますが、残りの9種類は合成できず、食物から摂取しなければなりません。この9種を「必須アミノ酸」と呼びます。

タンパク質は長い鎖のような構造といっても、1本の紐のようになっているわけではありません。構成するアミノ酸の特性や周りの環境との相互作用によって立体的な構造をとります。例えば、アミノ酸の中には水に溶けやすい「親水性」のものと、水に溶けにくい「疎水性」のものがあります。疎水性は水に溶けないのではなく、水と油を比較すると油のほうがよく溶けるという意味で、「親油性」という呼び方も使われます。疎水性のアミノ酸が長く連なっている部分は、細胞内で疎水性の細胞膜などに結合していたり、細胞膜を貫通したりします。

また、タンパク質内のアミノ酸同士で結合して3次元的な構造を取り、各部分が機械のように動くことでいろいろな働きをします。また、ほかの物質と結合するポケットを作ることもあります。受容体や酵素などがその例です。

(「トコトンやさしい人体のしくみの本」p.16-17より一部抜粋)

<書籍紹介>
人の体は複雑で、すべてを理解するのは難しい。本書では、人体の機能やしくみについて、高校で学ぶ生物の知識がない人にもわかるように、トコトンやさしく解説する。

書名:今日からモノ知りシリーズ トコトンやさしい人体のしくみの本
著者名:倉橋 隆
判型:A5判
総頁数:160頁
税込み価格:1,650円

<執筆者>
倉橋 隆(くらはし たかし)
1990年 筑波大学大学院 修了(理学博士)
1990年 生理学研究所 助手
1992年 ジョンズ・ホプキンス大学医学部 リサーチフェロー(上原財団)
1992年〜93年 モネル化学感覚研究所・所長招聘リサーチフェロー
1996年 大阪大学大学院 助教授
1999年〜現在 大阪大学大学院 教授
2010年〜現在 三重大学大学院 客員教授、リサーチアソシエイト

【受賞歴】
モエヘネシールイヴィトン(仏) ダビンチ賞
米化学感覚学会(AChemS) Takasago賞
【主な著書】
「嗅覚生理学」フレグランスジャーナル社、2004年
「トコトンやさしいにおいとかおりの本」(共著)日刊工業新聞社、2011年
「神経細胞の科学」(共著)日刊工業新聞社、2013年

<販売サイト>
Amazon
Rakuten ブックス
日刊工業新聞ブックストア

<目次(一部抜粋)>
第1章  生命とは—ヒトの体は分子、細胞、組織でできている
ヒトの体を構成するもの[いろいろな臓器、器官、細胞、分子]
ヒトの体は主に炭素、酸素、水素で構成されている[分子から見た人体]
身体のしくみの数字のヒミツ[生体現象の対数と指数]
体の中の潤滑油[ビタミンや補酵素]

第2章 神経情報と液性情報—体の中の協調性をとる
脳と脊髄は感覚や指令の中心[脳と脊髄を合わせた中枢神経系]
哺乳類で発達している大脳皮質[運動や思考の機能を司る]
脳や脊髄から伸びる末梢神経系[感覚神経、運動神経、自律神経]
体をまとめる司令塔[内分泌腺やホルモンの種類]

第3章 酸素や栄養素の循環―生体の防御
呼吸のしくみ[助間筋と横隔膜]
肺で酸素を受け取って、各組織へ運ぶしくみ[赤血球の役割と機構]
体内に入ってきた異物を攻撃する免疫[非特異的免疫と特異的免疫]
体の中への特定の侵入者を攻撃する[特異的免疫]

第4章 栄養分を吸収してエネルギーに利用—消化と活動のメカニズム
食べ物が分解され吸収されるしくみ[消化酵素の働きで栄養分を吸収]
筋肉を機能や見た目や性質で分類する[横紋筋と平滑筋、速筋と遅筋]
2つのフィラメントが滑る分子構造[ミオシン頭部の動き]
骨のしくみと役割[血液を作り、栄養を貯蔵する]

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