「免疫力をつける」ってどういうこと?必要な栄養源とは
免疫システムを維持するアミノ酸
私たちには、細菌やウイルスなどの異物が外から体の中に侵入してくるのを防いだり、がんなどの体内に生じる異物を排除することなど、体を守るための免疫の仕組みが備わっています。毒物を排泄することや、体を修復する治癒力も広い意味では免疫の働きの1つです。これらの異物を排除するために中心的な役割を果たしているのが白血球です。白血球には異物を排除するもの、抗原を記憶するもの、抗体を作るものなど様々な役割を持つタイプが知られており、お互いに複雑にコミュニケーションを取りながら免疫機能を発揮しています。このような免疫システムを維持していく上で、アミノ酸が重要な役割を果たしていますが、特に免疫細胞の栄養源として多くの量が必要とされるのがグルタミンです。
グルタミンは消化管の粘膜の栄養源としても利用されることから腸管でのバリア機能を高める作用もあり、腸管免疫機能の発揮に重要な役割を果たしています。また、アルギニンは白血球の自然免疫における殺菌効果を担う一酸化窒素(NO)の原料となることから、免疫機能を高める役割を持つアミノ酸です。これらを配合した医療向けの製品が発売されています。さらに、シスチンとテアニンの摂取により、激しい運動により低下した白血球の貪食能を高めたり、風邪の発症を抑えたり、インフルエンザの予防接種による抗体産生を高める効果があることなど、免疫力を高める効果があることが報告されています。
シスチンとテアニンは生体内で作られる抗酸化物質であるグルタチオンを構成するアミノ酸のシステインとグルタミン酸の供給源となります。グルタチオンが増えることは、免疫力の改善と免疫機能の調節の両方に役立つものと考えられています。アトピー性皮膚炎の動物モデルにおいて、免疫システムのバランスが改善され皮膚症状を改善したとする報告があり、臨床応用が期待されています。
<書籍紹介>
体の大部分を構成する「アミノ酸」。人間が生命を維持するためには、必要不可欠な成分である。アミノ酸に関する研究開発は日々進み、新たな特性や活用方法が発見されている。本書では、歴史から特性、応用分野、未来に期待される技術など、アミノ酸に関する内容を総合的にやさしく紹介する。
書名:今日からモノ知りシリーズ トコトンやさしいアミノ酸の本
編著者名:味の素株式会社
判型:A5判
総頁数:160頁
税込み価格:1,650円
<執筆者>
味の素株式会社
http://www.ajinomoto.com/jp/
<販売サイト>
Amazon
Rakuten ブックス
日刊工業新聞ブックストア
<目次(一部抜粋)>
第1章 アミノ酸って何
タンパク質を作るアミノ酸「いのちのもと『アミノ酸』」/アミノ酸が体を作る「タンパク質の消化吸収と再合成」/アミノ酸の構造「形が性質を決める」
第2章 アミノ酸はどうやってできる
アミノ酸を生産する方法「種類によって様々な方法がある」/発酵法でアミノ酸を作るには「アミノ酸を作るコリネバクテリウム細菌」/発酵法によるアミノ酸生産「微生物を利用した新産業」
第3章 アミノ酸と食・栄養
うま味の相乗効果「世界の料理で使われてきた、料理をおいしくする仕組み」/うま味を用いて上手に減塩「「うま味」は、5基本味の1つ」/グルタミン酸は健康な食生活を支える?「満足感の付与」
第4章 アミノ酸と健康
免疫システムを維持するアミノ酸「グルタミン、アルギニン、システインとテアニン」/睡眠とアミノ酸「グリシンで質の高い睡眠を」/アミノ酸でアルコール分解「二日酔い予防」
第5章 アミノ酸と美容
肌のうるおいとアミノ酸「肌状態の改善には保湿が重要」/肌を守るアミノ酸「アミノ酸は複数の手段で体を守る」/美白とアミノ酸「肌の色もアミノ酸で作られる」
第6章 アミノ酸とスポーツ
スポーツアミノ酸BCAA「BCAAのスポーツ時の効果」/持久力向上「アミノ酸の補給で疲れにくく楽しくスポーツを」/疲労・筋肉痛を回復「アミノ酸の補給で疲労を素早く回復」
第7章 アミノ酸と医療
アミノ酸で「がん」を見る「新しいタイプのがんの早期発見技術」/アミノ酸のみで設計された栄養輸液「アミノ酸輸液」/クローン病と成分栄養剤「タンパク源をアミノ酸とする栄養剤」
第8章 アミノ酸利用の広がり
アミノ酸による途上国の栄養改善「“KOKO Plus”によるガーナでの栄養改善の取り組み」/細胞培養用培地「先端バイオ医薬品の製造や再生医療用細胞の培養への利用」/ 海・川を育てるアミノ酸コンクリート「防災と環境の両立を目指す」