ニュースイッチ

手術用ロボに強い味方。360度折り曲げ自在の腹腔鏡手術用柔軟関節鉗子がスゴイ

手術用ロボに強い味方。360度折り曲げ自在の腹腔鏡手術用柔軟関節鉗子がスゴイ

360度曲げられるPEEK製柔軟関節鉗子(上向き)(東京高専提供)

東京工業高等専門学校の原口大輔准教授らは、スーパーエンジニアリングプラスチックのポリエーテルエーテルケトン(PEEK)製で柔軟に曲がりハサミを動かせる腹腔鏡手術用の柔軟関節鉗子を開発した。直径5ミリメートルと細いが、手術に必要な4ニュートン以上の力を出せる。耐熱性に優れたPEEKの採用で繰り返しの加熱滅菌が可能。手術用ロボットに用いると剛性が高いため、精密な手術が可能になると期待される。

鉗子の先端のハサミの手前に柔軟関節構造を導入した。PEEKの約1センチメートルの区間に12段のスリットを刻み、ワイヤで引くと柔らかく曲がる。最大屈曲角度は75度。ワイヤ4本が拮抗しており360度自由に曲げられる。

PEEKの内側にフッ素樹脂のポリテトラフルオロエチレン(PTFE)のチューブを挿入することで剛性を高めた。ワイヤを引いて30ニュートンの張力をかけても、0・23ミリメートルしか縮まない。PEEKだけだと縮んだ後に復元せず、圧縮量が手術の度に蓄積する課題があった。

鉗子先端のハサミの把持力は最大4・55ニュートン、屈曲力が最大4・33ニュートン。腹腔鏡手術には4ニュートン以上の力が必要とされるが、直径5ミリメートルの細さで達成できた。

現行品のロボット鉗子はプーリーなどの機構を用いており、構造が複雑で細径化が難しかった。鉗子が細いと手術の侵襲性が下がる。柔軟関節鉗子は細くでき、組み立てなどもシンプルだが、屈曲力の確保が課題だった。新型の鉗子はロボット、医師のどちらでも利用できる。手術時に腸管を把持したり、病変組織を剝離するなどの手技に使われる。

日刊工業新聞2021年10月

編集部のおすすめ