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がん治療で最新手術支援ロボ「ダヴィンチX」がやってくる

米インテュイティブサージカルが6月初旬に初納入
 4月から新たに保険適用となったロボット支援手術―。その市場を独占する米インテュイティブサージカルは日本で6月初旬に手術支援ロボットの新製品「ダヴィンチX」を医療機関に初納入する。小型化により従来機に比べ約4割安くした。保険適用の拡大や製品の低価格化で患者や病院の負担を軽減する利用環境の整備が進む。一方で腹腔鏡手術や胸腔鏡手術に比べロボットを用いた手術の優位性をいかに高めるかが市場拡大へのカギとなる。
 
 ロボット支援手術はこれまで前立腺がんと腎がんで保険適用されており、4月から新たに胃がんや食道がん、肺がん、直腸がんなどの手術に適用された。高額ながん治療が患者にとってより身近なものになり、治療の選択肢が増える。

 その手術支援ロボットの代表格がダヴィンチだ。日本では2009年の薬事承認以来約10年で累計約300台を導入。インテュイティブサージカルは3―4年の間隔で新製品を開発し、5月に第4世代となるダヴィンチXを発売した。手術の範囲を限定することで、小型化した。価格は約2億円で、従来機の「Xi」に比べ約1億円安くした。

 ダヴィンチ普及への課題の一つが価格。インテュイティブサージカルは小型化によって価格を抑えたほか、7月にはリユース鉗子の価格を一部下げる予定だ。課題のもうひとつが「腹腔鏡手術などと診療報酬の点数が同じ点」(滝沢一浩社長)。ロボット支援手術の保険適用が拡大したとはいえ、腹腔鏡手術や胸腔鏡手術を行ってきた病院や医師にとって「(コストのかかる)ダヴィンチを導入するメリットがあまりない」(関係者)と判断する傾向がある。

 そのため、優位性の訴求が欠かせない。約600件のロボット支援手術を行ってきた藤田保健衛生大学病院消化器外科医の宇山一朗医師によると、14施設で326例のロボット支援手術を行ったところ、8例の患者が合併症を発症、これは全体の2・4%で腹腔鏡手術の半分以下になることを確認した。宇山医師は「合併症のリスク抑制につながる。術後早期に社会復帰が期待でき、患者の生活の質も向上する」と評価する。

 20年の診療報酬改定に向け、学会を挙げてダヴィンチを用いた症例数を獲得したり、エビデンスの取得を進めたりする。インテュイティブサージカルはダヴィンチを操作できる医師の育成などに協力する。
来月に初納入する「ダヴィンチX」
日刊工業新聞2018年5月31日
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
こうした取り組みを通じ、優位性を高めて診療報酬の点数を増やし、病院や医師にとってのメリットを生み出していく考えだ。 (日刊工業新聞社・清水耕一郎)

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