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オリンパスは世界と戦うため重要なポジションに外国人を登用する

笹宏行社長インタビュー
オリンパスは世界と戦うため重要なポジションに外国人を登用する

笹宏行オリンパス社長

 オリンパスは2021年3月期に売上高1兆1000億円を目指す中期経営計画の達成時期を2、3年延期する。欧州や米国における医療機器の法規制に対応するためだ。ただ戦略の方向性は変えず、外科手術用のエネルギーデバイス領域などを開拓し、もう一段の成長を狙う。笹宏行社長に今後の道筋を聞いた。

 ―中計の目標時期を見直します。
 「市場のトレンドは変わらず方向性は間違っていない。ただ欧米での法規制が厳しくなっている。例えば欧州で流通する医療機器に関する新たな規制『医療機器規則』(MDR)が17年5月に発効し、医療機器に求められる品質について従来の推奨から規則に変わった。その対象は現在販売している製品を含めてすべてのデータを集め、リポートをそろえなければならない。結構な負担となり、新製品の投入も遅れたりする」

 ―市場の変化への対応として人工知能(AI)の取り組みも進めています。
 「コンピューターを学習させる際に病変の診断をどのようなクライテリア(基準)で判断するか、その標準化は必要だろう。現在は個人や国で異なったりする。どのように診断学を作り、コンピューターに教えるかだ。例えばポリープの有無を識別するのと、診断学に根差したAI活用の自動診断ではかなりの差がある。オープンイノベーションで役割分担し、スピードを上げる」

 ―エネルギーデバイスの強化策は。
 「エネルギーデバイスはまだまだで、(外科手術の最大市場である)北米などに力を入れている。ただ米国食品医薬品局(FDA)から腹腔鏡手術による子宮摘出手術で警告書が発出され、そこに用いるデバイスの販売も落ちている。今後はさまざまな診療領域で対応できるデバイスを継続的に増やしていく」

 ―グローバル化への対応は。
 「会社がグローバライズされ、日本の会社でないという方向によりかじを切る。そうしなければ世界の競合に太刀打ちできない。重要なポジションに外国人を登用する人事などグローバル化の取り組みを加速する」

日刊工業新聞2018年6月7日
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
内視鏡の世界シェアは7割以上だが、成長市場のエネルギーデバイスのシェアは20%程度。ライバルもこれまでの日本企業から、米ジョンソン・エンド・ジョンソンや米メドトロニックといった世界大手に変わる。次の成長を見据え、グローバルでの業務効率化や人材の最適配置を進め、世界で戦える企業体質を築けるかが問われる。 (日刊工業新聞社・清水耕一郎)

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