アサヒ、東欧ビール事業の巨額買収。成功のカギは?
規模を競わず、プレミアムビールで独自の地位を築けるか
アサヒグループホールディングス(GHD)がビール世界最大手、アンハイザー・ブッシュ・インベブ(ABインベブ、ベルギー)から、中欧・東欧のビール事業買収を決めた。アサヒGHDは10月にもABインベブから西欧ビール事業を買収したばかり。一連の買収にはABインベブや同業他社に比べ出遅れていた海外展開を一気に加速し、成長を図る狙いがある。
買収が伝えられた13日、アサヒGHDの株価は巨額買収による財務内容悪化を懸念し、前日比4・61%安の3497円に下落した。国内ビール類市場が縮小する中、「成長エンジンは海外」(小路明善社長)にあるのは確か。売り上げだけでなく利益面でも成果を挙げるには、海外企業との人材融和と緻密な商品戦略が不可欠だ。
10月に買収した西欧ビール事業は高単価のプレミアムビール主体のため、営業利益率が約17%と高い。今回、買収する東欧5カ国のビールもピルスナーウルケルなど名門ビールが多く、営業利益率は約21%。アサヒGHDがこのブランド価値を生かし、自社のスーパードライ拡販と合わせて、相乗効果を生み出せるかが焦点だ。
世界市場ではABインベブによる2位メーカー、英SABミラー買収が確定し、大型再編はほぼめどが付いた。アサヒGHDは規模を競うのでなく、プレミアムビールで独自の地位を築く方向。その意味でも人材、商品ブランド戦略がいっそう重要になる。
(文=嶋田歩)
食品業界では、海外の企業や傘下の事業を買収する動きが活発だ。10月にはアサヒグループホールディングス(GHD)が、約3000億円を投じた英国ビール大手の欧州ビール事業の買収を完了した。国内は飲料を筆頭に店頭で低価格競争が激しく、商品の“寿命”も短い。少子高齢化で、市場が縮小している現実もある。食品メーカーは海外に活路を求め、成長を模索する。ただ、海外で利益を上げるのは簡単ではない。腰を据えた対応が求められる。
「本日、アサヒグループは歴史的な一歩を踏み出した。この買収を転換点として、日本発の強みを生かすグローバルプレーヤーとなるべく、大きくかじを切る」。買収先との協業戦略を公表した11月24日の会見で、アサヒGHDの小路明善社長はこう打ち上げた。
アサヒが買収したのはイタリアの「ペローニ」などのプレミアムビールブランド。アサヒの海外売上高比率は10%台。キリンホールディングス(HD)やサントリーホールディングス(HD)に比べ、低かったが海外重視の戦略にかじを切る。
永谷園ホールディングス(HD)は英フリーズドライ食品メーカー、ブルームコを産業革新機構と共同で約150億円で買収する。永谷園HDは、お茶漬けのりや即席みそ汁で国内シェアが高い。
だが、売上高に占める海外の比率は2%程度。「今後も成長を続けるためには、海外に足を伸ばさないといけない」。五十嵐仁常務は決意を語る。フリーズドライは生鮮食品と違い鮮度を保つ輸送の課題がなく、自社技術を融合し欧米市場を開拓できるとの読みもある。
キユーピーも9月に、ポーランド・モッソのマヨネーズ事業を買収。欧州はマヨネーズ発祥の地で消費量も多い。海外展開は中国・東南アジアが主だったが、欧米市場に拡大を狙う。味の素や日清食品ホールディングス(HD)、ヤクルト本社なども海外で積極的に展開している。海外深耕の流れは続きそうだ。
買収が伝えられた13日、アサヒGHDの株価は巨額買収による財務内容悪化を懸念し、前日比4・61%安の3497円に下落した。国内ビール類市場が縮小する中、「成長エンジンは海外」(小路明善社長)にあるのは確か。売り上げだけでなく利益面でも成果を挙げるには、海外企業との人材融和と緻密な商品戦略が不可欠だ。
10月に買収した西欧ビール事業は高単価のプレミアムビール主体のため、営業利益率が約17%と高い。今回、買収する東欧5カ国のビールもピルスナーウルケルなど名門ビールが多く、営業利益率は約21%。アサヒGHDがこのブランド価値を生かし、自社のスーパードライ拡販と合わせて、相乗効果を生み出せるかが焦点だ。
世界市場ではABインベブによる2位メーカー、英SABミラー買収が確定し、大型再編はほぼめどが付いた。アサヒGHDは規模を競うのでなく、プレミアムビールで独自の地位を築く方向。その意味でも人材、商品ブランド戦略がいっそう重要になる。
(文=嶋田歩)
日刊工業新聞2016年12月14日
食品大手、成長模索し海外でM&A続く
食品業界では、海外の企業や傘下の事業を買収する動きが活発だ。10月にはアサヒグループホールディングス(GHD)が、約3000億円を投じた英国ビール大手の欧州ビール事業の買収を完了した。国内は飲料を筆頭に店頭で低価格競争が激しく、商品の“寿命”も短い。少子高齢化で、市場が縮小している現実もある。食品メーカーは海外に活路を求め、成長を模索する。ただ、海外で利益を上げるのは簡単ではない。腰を据えた対応が求められる。
「本日、アサヒグループは歴史的な一歩を踏み出した。この買収を転換点として、日本発の強みを生かすグローバルプレーヤーとなるべく、大きくかじを切る」。買収先との協業戦略を公表した11月24日の会見で、アサヒGHDの小路明善社長はこう打ち上げた。
アサヒが買収したのはイタリアの「ペローニ」などのプレミアムビールブランド。アサヒの海外売上高比率は10%台。キリンホールディングス(HD)やサントリーホールディングス(HD)に比べ、低かったが海外重視の戦略にかじを切る。
永谷園ホールディングス(HD)は英フリーズドライ食品メーカー、ブルームコを産業革新機構と共同で約150億円で買収する。永谷園HDは、お茶漬けのりや即席みそ汁で国内シェアが高い。
だが、売上高に占める海外の比率は2%程度。「今後も成長を続けるためには、海外に足を伸ばさないといけない」。五十嵐仁常務は決意を語る。フリーズドライは生鮮食品と違い鮮度を保つ輸送の課題がなく、自社技術を融合し欧米市場を開拓できるとの読みもある。
キユーピーも9月に、ポーランド・モッソのマヨネーズ事業を買収。欧州はマヨネーズ発祥の地で消費量も多い。海外展開は中国・東南アジアが主だったが、欧米市場に拡大を狙う。味の素や日清食品ホールディングス(HD)、ヤクルト本社なども海外で積極的に展開している。海外深耕の流れは続きそうだ。
日刊工業新聞2016年12月8日