【動画あり】ロボットの目にも涙。関西大が開発した技術とは?
関西大学の瀬島吉裕准教授らは、人間のように涙を流すロボットを開発した。涙を1滴ほろりとこぼすことも、号泣することもできる。人にとって涙は強い印象を与える。実験では涙袋に水分がたまって涙目になるよりも、涙が流れた時の方が強く印象を受けた。ストレス解消のために泣いて気持ちを整理する「涙活」や、遠隔カウンセリングなどにロボットを応用することを目指す。
目の上に水分が充填されたチューブを配置して、チューブを圧迫することで水分を目に送る。水分は涙袋に一度たまり、涙目を形成する。涙袋にたまった水分は吸い取って排水できる。水分の供給と排出がされると液面が動き、瞳がにじむように見える。
涙を排出せずに、供給量を増大させると涙袋から滴がこぼれて涙滴が落ちる。いわゆる号泣も再現できる。アニメやコンピューターグラフィックス(CG)などの誇張した表現でなく、リアリティーの高い落涙を表現できる。実際に学生13人を対象に官能評価をしたところ、ロボットの感情の強さの印象について涙目よりも落涙の方が強く感じた。
眼球部分が小型ディスプレーになっているため、黒目を動かして注視する方向を制御できる。センサーと組み合わせれば目を合わせたり、そらせたりしながら涙を流すことができる。瞳孔の大きさも制御もでき、目を合わせた時の引き込まれ感を感じるかどうか検証できる。涙は脳科学や生理学で研究されてきたが、これまで工学的な解析は少なかった。
研究グループではロボットが率先して涙を流すことで、「涙活」のように周囲の人が泣くことを許される雰囲気を作れると想定している。
研究は総務省の「異能vation」プログラムの支援を受けた。
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日刊工業新聞2021年9月日