ジレンマ抱える「ソフトバンク」、スマホの顧客単価向上へ問われること

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ソフトバンクグループの孫正義会長

ソフトバンクが客単価の向上を急ぐ姿勢を鮮明にした。14日、携帯通信サービスの旗艦ブランド「ソフトバンク」利用者向けに、動画配信やスマートフォン決済で新たな特典を提供すると発表。第5世代通信(5G)対応エリアの拡充が順調に進む見通しも示し、大容量のデータ通信を快適に使えると訴求した。中・低容量帯の顧客が多い他ブランドから、ソフトバンクブランドへの移行を加速できるかが焦点となる。(編集委員・斎藤弘和)

「5Gの時代には、“ギガ”をどれくらい使っているかを意識せずに、フリーで使って頂きたい。この9月は(米アップルの新製品発表会という)大きなイベントもあるだろうし、優先順位(が高い商材)としてソフトバンクブランドの魅力をまとめて発表した」。榛葉淳ソフトバンク副社長は14日の会見でこう述べた。

ソフトバンクは既存の基地局設備も活用して5Gエリアの拡大を急いできた(同社提供)

新たな施策として、ソフトバンクブランドのスマホを持つ顧客に対し、スマホ決済「ペイペイ」で最大半額相当を還元するクーポンの配布を10月に開始。また、同ブランドの料金プラン「メリハリ無制限」加入者へは、動画配信サービス「ユーチューブ・プレミアム」を6カ月間無料で使える特典を2022年以降に提供する。

5Gエリアの整備では、人口カバー率を22年春に90%とする目標を掲げてきたが、21年10月末には80%に達する見込みも示した。13日時点では約59%であるため、今後は拡大のペースが速まるとも言える。5Gを使える場所の増加を訴求することで大容量データ通信の需要を喚起し、客単価の増加につなげる狙いがある。

他方、中・低容量帯の料金プランについては動きを示さなかった。13日にはKDDIがオンライン専用ブランド「ポヴォ」の刷新を発表し、20ギガバイト(ギガは10億)の実質値下げや3ギガバイトのプラン設定などに踏み切ったが、ソフトバンクは即座には対抗しなかった格好だ。榛葉副社長は「いろいろな検討は常にしている。顧客と向き合い、必要とあれば考えていきたい」と述べるにとどめた。

各社は中・低容量帯の顧客獲得に力を注ぎすぎるとARPU(契約者1人当たりの平均収入)の増加につながりにくいというジレンマを抱えており、収益確保の観点では大容量プランが重要になる。ただ、大容量のデータ通信の需要は、魅力的なコンテンツがどれだけあるかで変わる。5Gが必須となるような周辺商材をどれだけそろえていけるかが、あらためて問われる。

新サービスを訴求する榛葉副社長(14日)

日刊工業新聞2021年9月15日

キーワード
ソフトバンク 5G

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