「心配性に裏付けられた直感」を信じるSOMPOHD社長の経営哲学

矛盾抱え込む胆力も必要

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直感を信じる。といっても、天才的なひらめきではない。信じているのは「心配性に裏付けられた直感」だという。

「臆病で悩んで悲観的でないと直感力は育たない。楽観的な人はうらやましいが、直感は働かない」

人口減少で市場が先細りする中で、保険だけで良いのか。それに、損害保険は事故に遭った時にだけ保険金が支払われる。事故に遭わない限り、その価値は実感しにくい。「事故の時の経済的なマイナスをゼロにすることが、保険のできる精いっぱいのことだ。ゼロをプラスにするような幸せをお客さまに提供することは難しい」。悩みは募る中で直感が働いたという。

「お客さまの安心や安全、健康についての具体的なソリューションを提供できる会社になれないか」

この問いかけを基に2016年、「安心・安全・健康のテーマパーク」を打ち出した。先立つ15年にはワタミの介護事業を買収。テーマパークを築く上で照準にしたのは「保険に近い」介護事業だった。介護と保険をデジタル技術でつなぎ、長寿社会に貢献する新たなビジネスモデルの構築を目指している。

この直感は、アジア開発銀行への出向経験からも大きな影響を受けている。多様な国籍の人たちと同じ場所で働く環境に衝撃を受けた。

「あうんの呼吸がない。ぶつかり合いも激しい。ダイバーシティー(多様性)の重要性が私の直感に植え付けられた」

「人種のるつぼ」にいた4年間の経験は後の重要な経営判断につながる。米国を中心に保険を展開するエンデュランスの買収を決めたのは16年。買収額は約6400億円。SOMPOホールディングスとして最大の買収だ。米国に基盤を置き、海外の成長を取り込むための経営判断だが、狙いは企業文化を変えることにもあった。

「従業員は刺激を受けた。仲間は日本人だけではないと意識し、物事をグローバルで捉えるようになった。ダイバーシティーが進み文化が変わり始めた」

ダイバーシティーは「アウフヘーベン(止揚)」を生むという。矛盾や対立をより高い次元で統一して解決するという独哲学者ヘーゲルの言葉だ。

「ダイバーシティーとは矛盾でもある。経営には矛盾を抱え込む胆力も必要だ」

直感力と胆力で、収益のダイバーシティーと同時に企業文化のダイバーシティーを進める。(編集委員・池田勝敏)

【略歴】さくらだ・けんご 78年(昭53)早大商卒、同年安田火災海上保険(現損害保険ジャパン)入社。92年アジア開発銀行へ出向、02年経営企画部長、07年取締役常務執行役員、10年社長、12年SOMPOホールディングス社長、19年経済同友会代表幹事。東京都出身、65歳。

日刊工業新聞2021年8月24日

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