厚生労働省が「裁量労働制」見直しへ、論点は?

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裁量労働制の在り方について議論する厚労省の検討会

厚生労働省は、裁量労働制の仕組みを見直す。同制度が適正に運用されるような工夫の導入をはじめ、適用の対象範囲、労働者の健康を維持する措置などが主な論点となる。主要企業や労働組合、関係団体などに対するヒアリング調査を実施し、議論に反映する。月1回ペースで審議会を開き、議論する。円滑な労使の対話の仕組みを整備できるかがカギとなりそうだ。(幕井梅芳)

裁量労働制は、従来の一律的労働時間規制を改めて、業務遂行の手段や方法、時間配分など大幅に労働者の裁量に委ねる。一定の専門的・裁量的業務に従事する労働者について、労使であらかじめ定めた時間働いたものとみなす制度。制度の趣旨としては、経済構造の知識集約化が進む中、労働時間の投入と仕事の成果の関係性が薄れる業務が増えてきた状況が背景にある。働き手からも業務時間と生活時間を柔軟に配分できる仕組みへのニーズは高い。こうした労使双方の事情から、労働時間の決定を働き手の自主性に任せる一方、賃金はあらかじめ決めた「みなし労働時間」に対応した形で支払う、という制度がつくられた。

厚労省が今回裁量労働制を見直すのは、一部同制度を適正に運用がされていないケースがあることや、労働者の裁量や健康が確保されていないケースなどがでてきたことが背景にある。

このため、厚労省は、労働政策審議会(厚労相の諮問機関)に専門部会「これからの労働時間制度に関する検討会」を設け、裁量労働制の制度改革案を議論する。すでに、今春に、現行の専門業務型と企画業務型それぞれの裁量労働制の適用・運用実態を把握するための統計調査を実施した。さらに、今後企業や労働組合、関係団体などにヒアリング調査を行う。「制度の運用実態の生の声を聞く」(労働基準局労働条件政策課)のが狙いだ。

主な論点としては、対象業務の範囲について、厚労省が実施した調査でも見直すべきだとする意見が根強いことから、一つのテーマとなる。また、勤務先に設けられている現在の働き手の健康・福祉の確保措置について、一部が過重労働に至るケースもあり、論点になる。さらに、裁量労働制が適正に運用されていないケースもあり、この適正な運用をどう確保していくかも課題となる。厚労省は「裁量労働制だけでなく、他の制度も含めて幅広く議論していく」(労働条件政策課)考えだ。

裁量労働制について、日本総合研究所の山田久副理事長は、「裁量労働制自体に問題があるわけでなく、それが適正に運用されれば、むしろ経済成長のみならず、働き手の満足度向上にとって望ましい」とし、制度自体の趣旨は尊重すべきだとしている。

ただ、「業務時間と生活時間を柔軟に配分できるだけの自主性・裁量性が当該の働き手に与えられているかという課題がある」(山田副理事長)とし、制度が適正に運用されていない点を指摘する。また、過重労働防止のための健康管理措置があいまいとの課題もあげる。

こうした課題を解決していくには、労使間のコミュニケーションをいかにとっていくかという点が最大の焦点となる。このため、裁量労働制を適正に運用していくため、労使の円滑な対話方法についてガイドラインを設け、見える化し法案に加えるなど、工夫が求められそうだ。

日刊工業新聞2021年8月17日

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