ニュースイッチ

五輪出場に3度目の挑戦。下町ボブスレーは困難をバネに夢の舞台に立てるか

次こそ夢の舞台へ
五輪出場に3度目の挑戦。下町ボブスレーは困難をバネに夢の舞台に立てるか

昨年製造したソリをイタリアチームがテスト走行した(今年2―3月)

五輪出場に3度目の挑戦―。東京都大田区の町工場を中心とする下町ボブスレーネットワークプロジェクト推進委員会(下町PJ、黒坂浩太郎委員長=三陽機械製作所社長)は、2022年の北京冬季五輪に向け、新型のソリ2台の製造を開始した。イタリアのボブスレーチームが下町PJ製のソリに関心を示しており、1台をイタリアチーム仕様に作って提供する。同時に日本チームへの採用に向けて交渉を継続している。(南東京・増田晴香)

今回、下町PJとしては13、14号機となる2台を製造している。三陽機械製作所やムソー工業、関鉄工所、エースなど大田区内の企業を中心に約20社が加工に協力。ステアリングやフレーム、アクスル、ブレーキユニットなど合計約70点の部品を作る。

基本的にはこれまでの仕様を踏襲するが、イタリアチーム向けのソリは、コーナーが曲がりやすいようステアリングヘッドの角度を前後に動かせる新たな機構の要望があり、新たに設計している。

イタリアチームは9月下旬にドイツのコースでテスト滑走するため、これを目指して8月中に部品を完成。ドイツに輸送後に現地で組み立てる。

その後、同チームは10月に北京五輪で使用するコースで事前にテスト滑走する。ここでは、各国が北京五輪での使用を想定したソリをテストする予定だ。11月―22年1月には欧州で国際大会やワールドカップも開催されるが、ここで乗ってもらうことで、北京五輪での採用を着実にしたい考えだ。

また、下町PJでは設立当初から日本チームに乗ってもらう「オールジャパン」の五輪出場を目指しており、現在も諦めていない。黒坂委員長は「まずはイタリアチームに採用されて大会で入賞など好成績を残し、日本チームにもアピールしていきたい」とする。

今回製作する2台のうちの1台を日本チーム向けとし、国内に置いて「いつでも使える状態にする」(同)という。日本チームに対しては、22年2月の北京五輪、また26年のミラノ・コルティナダンペッツォ冬季五輪やその先も視野に入れ、速いソリを提供して粘り強く交渉していく構え。

下町PJは11年に発足し、14年のソチ冬季五輪、18年の平昌(ピョンチャン)冬季五輪へ出場を狙ったがいずれも不採用に終わった。平昌五輪ではジャマイカチームが公式に採用を表明までしていたが、直前に不採用が決定した。

北京五輪でイタリアチームへの採用を確実にするため、ソリの性能向上に全力を注ぐ一方、運営としては「地道に信頼関係を積み重ねるしかない」(黒坂委員長)としている。

これまでの困難をバネに、次こそ町工場の技術力を夢の舞台で発揮できるか。下町PJの挑戦が続く。

日刊工業新聞2021年8月17日

編集部のおすすめ