日本メーカー初。ロールス・ロイスの次世代ジェットエンジン用に試作部品を出荷した企業の正体

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アイコクアルファが英ロールス・ロイス向けに初出荷したジェットエンジン用試作部品

アイコクアルファ(愛知県稲沢市、樋田克史社長)が、英ロールス・ロイスの次世代航空機ジェットエンジン用に、回転体の試作部品を初出荷した。同種の部品での採用は、日本メーカーとして初だという。実現の背景には、アイコクが培ってきた挑戦する企業風土と、それを促す独自制度がある。大変革期にあって従来の正解が通じなくなりつつある自動車業界。同社の取り組みは、一つのヒントになるかもしれない。(名古屋・政年佐貴恵)

アイコクは等速ジョイントや変速機など車の駆動系冷間鍛造部品が主力だ。高精度、高品質が強みで、加工力を生かし航空宇宙系の機体やエンジン部品も手がける。ロールス・ロイスからの受注は事業拡大の一環だ。

今回採用されたのは、同社が2025年以降の実用化を目指す次世代エンジン「ウルトラファン」の試作機用部品。中圧コンプレッサーに使われる、円盤状のローターディスクと羽根を一体加工した「ブリスク」と呼ばれるものだ。複雑形状かつ特殊な素材で加工難度が高い上、精度も求められる。

技術的にも顧客としても難度の高い活動を支えたのが、創業以来さまざまな制度を用意して醸成してきた「新しいことにチャレンジし、個人も会社もレベルアップしようとする風土」(樋田知也専務取締役)だ。例えば年1回行われる「レベルアップ発表会」は、社員が1年間頑張ったことの成果を発表し、自らが望む人事等級をアピールする。その成果と等級が見合っていると認められれば、昇格・昇級できる制度だ。

また部署や職場の課題解決に小集団で取り組み、優勝チームに賞金を出す「課題ラリー発表会」や、各事業部の成果度合いに応じて利益を配分する制度などもある。加えて9割以上の社員が自社の株主となっている「全従業員株主」や、毎月の予算や実績など経理の状況を全従業員に明らかにする「ガラス張り経営」など、社員一人ひとりが経営者として自覚を持てるような仕組みも整えてきた。

ブリスクの加工技術確立は、課題ラリーで2位を獲得した。受注活動に携わった坂井紀夫AP事業部チーフマネージャーは「難しく責任も大きな仕事だったが、挑戦自体を評価するマインドがある」と、制度が機能していることを実感する。

社員が主体性を持つというポリシーは創業時から一貫しており、樋田専務取締役は「社員が仕事の主人公になれば、利益はついてくる」と断言する。「そのための環境をつくるのが経営者の仕事だ」。先行きが見通しにくい事業環境は続くが、積み上げてきた企業体質で、切り開いていく構えだ。

日刊工業新聞2021年8月17日

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