油圧ショベルの需要回復で大幅増益の建設機械4社。浮上した新たな課題
建設機械国内4社の2021年4―6月期連結決算は油圧ショベルの世界需要の回復に支えられ、全社が大幅増益を達成した。営業利益はコマツが前年同期比2・3倍、日立建機は同4・0倍になった。22年3月期連結業績予想も3社が大幅増益を見込む。一方、中国の減速やアジアへの低価格機輸出拡大の影響は現時点では軽微だが、鋼材価格の上昇が悪影響を及ぼしており、新たな課題に浮上している。
21年4―6月期はコベルコ建機を擁する神戸製鋼所の建機部門も経常利益が前年同期比4・6倍に拡大した。住友建機を抱える住友重機械工業も好調だ。
コマツの堀越健取締役常務執行役員最高財務責任者(CFO)は鋼材価格の上昇について「第1四半期(4―6月期)は31億円のマイナス要因になった」と話す。中国の建機売上高は前年同期の431億円から317億円に減少したが、世界全体の売上高は同4200億円から5930億円に増加。懸念されたアジア(中国を除く)も同233億円から512億円とプラスだった。
原材料の値上がりについては、日立建機の塩嶋慶一郎執行役財務本部長兼CFOも「鋼材の値上げ要求が国内を中心に複数回あり、応じざるを得なかった。(建機の)値上げ効果でカバーしたいが代理店の場合、年間で売価を設定するため困難だ」と説明。増収効果や円安効果もあるため、22年3月期の予想数字は変えていない。
建機部門で21年4―6月期に大幅増益を達成した神鋼は、22年3月期の同部門の経常利益予想を4月時点の70億円から10億円積み増し、80億円に引き上げた。ただ、経常利益の内訳を見ると4月の予想では上期(4―9月期)が30億円、下期(10月―22年3月期)が40億円だったのに対し、最新の予想は上期が80億円で下期はゼロ。これは鋼材価格の上昇が主要因で「自動車など他産業も含め取り合いになっている。建機向けの鋼材仕様もあるため、調達確保は厳しくなる」(コベルコ建機)と予想する。
住友重機械工業も「鋼材価格の上昇は油圧ショベルから船舶、運搬機械など、すべてでコストアップ要因になる」(渡部敏朗執行役員財務経理本部長)と打ち明ける。鉄鋼メーカーの状況を見ると下期以降も値上げ圧力が引き続き見込まれ、この結果次第で大きな利益ダウンになるとみている。一方で半導体不足の影響は軽微だとしている。
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