阪大・石黒教授の技術指導で誕生した「渋沢栄一アンドロイド」。よみがえった“肉声”の講義

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渋沢栄一記念館で行われたアンドロイド除幕式

地域おこしアンドロイド

埼玉県深谷市は、地域の魅力発信を狙いとしたロボット活用を進めている。同市出身で東京商工会議所の初代会頭を務めた実業家・渋沢栄一の功績を周知する手段として、生前の姿を再現したアンドロイド型ロボット「渋沢栄一アンドロイド」を制作した。大阪大学大学院基礎工学研究科の石黒浩教授が技術指導した。小島進市長は「渋沢栄一翁の精神を後生に伝えながら、深谷市の活性化に生かしたい」と期待を込める。(山下絵梨)

深谷市は2020年4月1日、渋沢栄一を活用した地域振興施策を推進する部署として「渋沢栄一政策推進部」を新設した。24年に発行される新一万円札の肖像画に選ばれ、NHK大河ドラマ「青天を衝け」の主人公として渋沢栄一が注目された。そこで地域おこしの一環として、渋沢栄一アンドロイドを2体製作することを計画した。同市出身の鳥羽博道ドトールコーヒー名誉会長の寄付を財源に実現した。

文字入力だけでリアルな音声でしゃべることができる渋沢栄一アンドロイド

渋沢栄一アンドロイドのうち、70歳頃の洋装の立ち姿のものは、渋沢栄一記念館(埼玉県深谷市)で一般公開している。アンドロイドは、石黒教授の技術指導の下、エーラボ(東京都千代田区)が制作を担当した。

渋沢栄一アンドロイドの特徴の一つは、エーアイの音声合成技術「AITalk」を活用して実現した声だ。生前の渋沢栄一の肉声を参考に、人前で講演するイメージで声優が発した声を収録。それを基に独自の音声合成辞書を作成した。音声合成辞書により、文字を入力するだけでリアルな音声でしゃべらせることができる。

こうした技術によって、大正時代に渋沢栄一が唱えた「道徳経済合一説」を現代風にアレンジして、それを題材にした講義を、テクノロジーで再現した“肉声”でよみがえらせた。

来館者は、渋沢栄一アンドロイドから講義を受けたり、在りし日の姿を体感できるなど渋沢栄一について体験しながら学ぶことができる。渋沢栄一は、論語の精神を重んじた道徳経済合一説を唱え、生涯で500を超える民間企業の設立や、約600もの社会福祉事業や教育・福祉の支援、民間外交に熱心に取り組んだ。その精神や意志を、当時の風貌を忠実に再現した渋沢栄一アンドロイドが語る言葉を通じて、経営者や次の世代を担う子供たちに広く知ってもらいたい考えだ。

もう1体の、和装姿の80歳頃の姿のアンドロイドは、旧渋沢邸「中の家」(埼玉県深谷市)の構造補強・改修工事が終了する23年4月以降に正式に公開する。

小島市長は「渋沢栄一翁の関連施設へ足を運んでもらえるようさらに取り組みを強化し、深谷市を『通り過ぎる場所』から『立ち寄る場所へ』と変化させられるよう着実に実行していく」と強調し、「全国から人が集うまち・深谷をPRし、地域活性化につなげたい」と意気込む。行政分野におけるロボット活用で、深谷市の取り組みが地域の魅力をアピールする好例となるか注目だ。

日刊工業新聞2021年8月12日

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