「IoT」に「金融」「スタートアップ支援」も。KDDIの知財戦略の全貌

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KDDIなどが来年度の商用化を目指す水中点検用ドローン(KDDI提供)

権利化で技術囲い込み

KDDIは主力の携帯通信事業で国内外の通信会社や機器メーカーと技術を共有し、標準化を進めている。一方、成長領域に位置付けるIoT(モノのインターネット)や金融などの非通信分野では特許の権利化で技術を囲い込み、他社と差別化する戦略だ。新事業創出に向けたスタートアップ支援も強化しており、資金面だけでなく知財活用も後押しする。事業領域に応じて戦略を使い分け、持続的成長を目指す。(苦瓜朋子)

規格に独自技術

通信分野の技術標準化では、規格策定に携わる部署をKDDI本体と子会社のKDDI総合研究所(埼玉県ふじみ野市)内に設置。国際的な標準化組織の要職に担当者を派遣するなど、自社の独自技術を規格に反映させるように努めている。

標準規格に不可欠な標準必須特許として認められれば、他社もその技術を使えるようになる一方で、ライセンス供与による対価を得られる。また、IoTの普及で通信業界と他業界で特許を巡る争いが激しくなる中、「特許を持つことがディフェンスにもなる」と川名弘志知的財産室室長は説明する。

総務省は第5世代通信(5G)の次の世代「ビヨンド5G」(6G)の実用化が見込まれる2030年に向け、知財・標準化を重要戦略の一つに位置付ける。KDDIも「標準化に関する特許を一つでも多く取得し、4G、5Gの数倍に増やしたい」(川名室長)考えだ。

携帯電話の通信料金引き下げで収益の多様化が求められる中、非通信分野にも注力する。その一翼を担うのが携帯通信回線を用いた法人向け飛行ロボット(ドローン)事業だ。

共創にも意欲的

現在ドローンの制御にはWi―Fi(ワイファイ)などが使われるが、電波の届く範囲に制限がある。22年度にも有人地帯での目視外飛行の規制が緩和される見通しで、遠隔から機体を安定制御する技術が重要となる。その際、より広域をカバーできる携帯回線の利用が有望視される。KDDIもドローンによる鉄塔やインフラ点検などの需要増を見込み特許出願を強化する。

新事業創出に向け、有望なスタートアップへの事業支援や出資を通じた共創にも意欲的だ。共創の場で生まれた成果物に関する知財はスタートアップ側に帰属させ、安心して参画してもらうことで有望企業が多数集まる好循環を生み出そうとしている。

スタートアップの中には知財専門部署を持たない企業も多い。KDDIは出資先を中心に発明発掘や特許権利化などを支援。人工知能(AI)やIoT、仮想現実(VR)などを手がける19社から知財業務を受託している。自社と協業する事業の競争力向上のほか、将来中核事業となり得る技術を早期に押さえることで支援先の長期的な成長につなげる構えだ。

「今後は権利化だけでなく、事業部的なセンスを持ち、ビジネスをデザインできる」知財人材が必要だと川名室長は展望する。「IPランドスケープ」を用いて、グループ内外の特許情報を統合分析し、競合との差別化や協業先の選定に役立てる方針だ。

日刊工業新聞2021年7月19日

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