隈研吾氏インタビュー、コロナ禍で人の関心が木材に向いた理由

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地場産材生かす街並みに

「日本が世界で木材による建築のリーダーシップをとれる絶好のチャンスだ」―。東京五輪・パラリンピックのメーン会場である国立競技場の設計に携わり、木質素材で多様な建築作品を生み出してきた世界的建築家の隈研吾氏は指摘する。環境保全意識の高まりに加え、コロナ禍により世界で木材の重要性が再認識されているという。木造建築で長い歴史を持つ日本はリーダーになれるか。木材の活用や街づくりの課題を聞いた。

―木材利用は二酸化炭素(CO2)排出を抑制します。コロナ禍が人の関心を木材に向けさせたのはなぜですか。

「新型コロナウイルス感染症の拡大で『都心から地方へ』『コンクリートによる“密空間”から屋外へ』と向かう価値観の変容が生じたことが要因だ。コロナは人間を屋内の閉じた密な生活から、半屋外の空間を上手に使う方向へ向かわせた。そうした半密・半屋外の建築に一番適した素材は木だ。環境問題への危機意識も高まったことも背景にある」

―日本が木材利用を積極化していくメリットは。

「日本は戦後から半世紀にわたりコンクリートなどを多用してきた。しかし木材活用が環境問題に有効なことは2000年ごろから世界中で言われてきたことで、特に欧州は木での中層建築で先行している。日本でも環境に配慮した建築が付加価値となる時代だ。古来より木と一体となって培ってきた日本の文化を取り戻すことが日本の再生にもつながる」

―輸入木材の価格高騰“ウッドショック”もあり、国産木材活用が求められています。

「主要な木材の杉は各地域で木目や色味など趣の異なるものが採れる。今後の街づくりでは地方が非常に重要で、地場産の木材を生かして地方発の木の街並みをどんどん広げていってほしい。例えば新潟・長岡市役所の建築では、半径15キロメートル圏内の越後杉を使うルールを敷いた。地場産の木材を使うことで、輸送コストやCO2の排出抑制にもつながる」

―木材利用を拡大していくうえでの課題は。

「林業は工業と異なり、60―100年のスケールで育て、伐採する。その60年の間に相続税が3回発生したら林を維持できないといった事態が平気で起きる。税制的対応や補助金なども含めて、林業の時間軸で長期的に進めていく必要がある。また、木材は耐震性や価格など、まだまだ解決すべき課題がある。原理主義にこだわらず、鉄骨など現代の技術と組み合わせてフレキシブルに活用することが、長期的に木を応援していくことになるのではないか」

日刊工業新聞2021年8月12日

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隈研吾氏

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