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社外取締役「3分の1以上」が7割超える。その効果は?

統治指針改訂が影響

東京証券取引所の調査によると、東証1部上場企業において取締役の3分の1以上を独立社外取締役に選任した会社の割合は7割を超えた。6月のコーポレートガバナンス・コード(企業統治指針)改訂や2022年4月の市場再編による影響が大きい。本来、企業価値向上のためのガバナンス改革だが、独立社外取締役の増加などが企業価値に実際にどのような影響を与えているのかの検証も求められる。(高島里沙)

東証が7月14日までに上場企業が提出したコーポレート・ガバナンス報告書に基づいて集計した。東証1部の2191社のうち、該当企業数は前年比319社増の1595社で、比率では同14・1ポイント増の72・8%と大幅に増加した。

6月改訂のコーポレートガバナンス・コードには、市場再編で最上位となる「プライム市場」への上場を目指す企業について「独立社外取締役を少なくとも3分の1以上選任すべき」と明記されている。この“3分の1規定”を先取りした形だ。3分の1に達しない場合は社長などに反対投票する機関投資家も増えているため、対応を急ぐ企業が増えた。

独立社外取締役を増やす本来の狙いは、取締役会の監視機能として社外の目を入れることにある。ただ神戸製鋼所や東芝、日産自動車、三菱電機など名だたる企業の不祥事が相次いでいる。大和総研政策調査部の鈴木裕主席研究員は「独立社外取締役を増やしても企業スキャンダルは絶えず、業績が向上しているわけでもない。経営にポジティブな影響を及ぼす期待はあってよいが、本当にそうなっているかは分かりづらい。渋々対応しているのではないか」とみる。非上場企業は独立社外取締役をほとんど入れていないことからも、その効果を期待する企業経営者はあまりいないとみられる。

今後は政策保有株式の開示によって株価は上がったのか、ダイバーシティー(多様性)推進で事業価値が向上したかなど、これまでの改革による効果の検証も必要だ。鈴木主席研究員は「企業価値を高めるために改革しているのに検証が非常に不十分なままだ。独立社外取締役を増やすことが目的ではない。目的達成の手段として適切かどうかを検証しなくてはいけない」と指摘する。

日刊工業新聞2021年8月6日

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