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総合商社が頭抱える「若手の離職」「モチベーション低下」。新人事制度は閉塞感を打ち破るか

総合商社が人事制度の改革を進めている。丸紅は「ミッション」の大きさに応じて管理職の処遇が変わる新人事制度を7月に本格導入した。三井物産は若手が早期から経営経験を積める制度を4月に開始し、双日は社員が専門性を生かしつつ多様なキャリアを選べる制度を3月に設けた。各社は、優秀な若手人材の離職防止や管理職の活躍を促す組織づくりに力を入れている。(森下晃行)

丸紅は2019年から人事制度の抜本的な改革に着手。7月に管理職層を対象にした等級制度「ミッションレーティング」を本格的に導入した。「上司と部下が話し合い『ミッション』が決まる。ミッションの大きさに応じ、管理職層の等級・基本給が毎年変わる」と鹿島浩二執行役員人事部長は説明する。営業本部であれば利益目標や新規事業の開発など、各人に期待する役割や定量・定性目標がミッションになる。

若手人材の活躍を促す制度では、三井物産が「キャリアチャレンジ制度」を4月に導入。若手社員が早くから管理職ポジションや経営経験を積める制度で、任用・昇格要件に関係なく、所属本部の支援の下で適任者に関係会社の経営層を任せる。

従来は部長・課長級が関係会社の経営層を担うことが多かった。総合商社のビジネスが取引の仲介から事業投資に変わり、投資先の経営管理を求められる機会が増大。経営人材の早期育成が狙いだ。

双日は3月に新会社「双日プロフェッショナルシェア」を設立した。35歳以上の中堅社員のうち希望者が転籍できる。社員はこれまで培った専門性や知見を生かし、双日本社から業務を請け負う。

新会社に転籍することで、介護と仕事の両立など多様な働き方が選べる。双日の藤本昌義社長は「社員が高いモチベーションや成長実感を持ち仕事ができる環境を整える」と強調する。

総合商社の間で、管理職のモチベーション停滞や小さな裁量に不満を抱く若手の早期離職、画一的な労働環境は近年の課題だ。各社は人事制度の刷新によって閉塞(へいそく)感を打ち破る。

日刊工業新聞2021年7月2日

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