ニュースイッチ

青山学院大、理工学研究科の入学者が増加している納得の要因

青山学院大、理工学研究科の入学者が増加している納得の要因

青山学院大の青山キャンパス(同大提供)

青山学院大学大学院では理工学研究科に入学する学生が増えている。内部進学の優遇制度や、手厚い研究指導が功を奏したことで修士・博士課程に進む学生が増えた。2021年度の入学者数は博士前期(修士)課程が前年度比約16%増、博士後期課程が同約2・7倍となった。長秀雄理工学部長兼理工学研究科長は「学部生の意識を高め、修士や博士課程への進学増につなぐ流れを確立したい」と意気込んでいる。

理工学研究科修士の入学者数は近年増加している。19年度は170人(理工学部入学時定員数の26%)だったが、20年度に196人(同30%)、21年度は228人(同35%)に伸びた。20年度の入学者から授業料の免除や半額にするといった内部進学の優遇制度を導入した。同時に学部生の成績上位者で無試験となる範囲を広げたことから、修士への進学に目を向けるきっかけとなった。

一方、博士課程の入学者が増えた要因は教員1人当たりの学生数を示す「ST比」が低く、教授(または准教授)と助教の教員がそろった研究室体制があると考えられる。理工系の中堅私立大学は専任教員1人当たりの学生数が10―20人程度と言われる中、青山学院大は4、5人だ。これにより、手厚い研究指導が可能となる。21年度は博士後期課程の入学者数が前年度より5人多い8人に増えた。

ここ数年、同大は全学で博士課程の学生や助教への支援を拡充してきた。助教や博士課程の学生向けの研究費支援のほか、優秀な博士課程の学生には授業料を実質無料化したり、教員への高度な補佐業務を行うティーチングアシスタントを越えた「院生助手」として雇用したりしている。

一連の支援が追い風となり、経済的な不安を抱えずに研究や論文執筆に打ち込む学生が増えていた。博士号取得後に大手メーカーの研究職に就く学生も出てきており、修士・博士課程に進む学生を増やすための一つのモデルケースとなりつつある。

関連記事:青山学院大、院生40人を「助手」雇用の狙い

日刊工業新聞2021年7月15日
山本佳世子
山本佳世子 Yamamoto Kayoko 編集局科学技術部 論説委員兼編集委員
「研究室主宰者(PI)が教授または准教授」というのはどの大学で共通するが、理工系の私立中堅大の研究室だとこれで終わる(研究室の教員は1人)ところだ。対して青山学院大では助教が多くいるため、ほぼ二人体制だという。さらに院生助手の制度を始めたことで、院生助手となった博士学生がプロの研究室スタッフとしてカウントされ、活躍するケースも増えている。金銭的支援は政府や各大学の施策としてすぐ思いつくものだが、それが有効となる前提として、研究室の環境がしっかりしていることがあるのかもしれない。

編集部のおすすめ