青学大が3層グラフェンで試作した「透明アンテナ」の実力
青山学院大学ナノカーボンデバイス工学研究所所長の黄晋二教授、渡辺剛志助教らの研究グループは炭素材料のグラフェンを使った透明アンテナを試作した。従来の単層グラフェン製を改良。3層に積層したグラフェンへのドーピング(添加)によるアンテナ性能向上と透過率90・9%の透明度を両立した。フレキシブルかつ透明なアンテナである特徴に加え、炭素材料で生体適合性が高いことから医療分野の利用が期待できる。
幅10ミリ×高さ5ミリメートルのモノポールアンテナを試作した。アンテナに必要な放射効率を10ギガヘルツ(ギガは10億)の電波で調べたところ52・5%だった。「3層グラフェンの約1ナノメートル(ナノは10億分の1)という厚さを考えると良好な数字。実用化に近づいた」(黄教授)。電波を出す能力を指す利得は、同じ形状で厚さ500ナノメートルの不透明な金属アンテナより3dBi低い数値で、今後の性能向上で実用化が見込めるという。
グラフェンは化学気相成長(CVD)で成膜した。従来は単層で作製していたが、グラフェンを銅板上で成膜した後、メタクリル樹脂(PMMA)を支持材として石英ガラス基板に積層転写して3層にした。
3層のグラフェンそれぞれの表面に添加物を塗布して抵抗値を下げ、アンテナの性能を高めた。
単層では透過率が97・0%と高いが、抵抗が750オームと高く、アンテナとしての利用が難しかった。そこで3層にして添加剤を加えることで抵抗を80オームに下げ、高い透過率を維持しつつアンテナの性能を高めた。
日刊工業新聞2021年5月19日