“6000人スキーム”も実施。博士課程学生を支援する文科省3施策の全貌

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政府が計画する10兆円規模のファンドの利益が活用できるまでつなぎとなる、博士課程学生を支援する文部科学省の3施策が出そろった。中でも「次世代研究者挑戦的研究プログラム」は、6000人の学生が対象で3施策の中で最大規模。既存の枠組みにとらわれない自由で挑戦的な研究を後押しするため、学生選抜などの大学責任者である「事業統括」の役割は大きい。(編集委員・山本佳世子)

次世代研究者挑戦的研究プログラムの事業統括は分野ごとに配慮し、異なる支援や研究費の配分ができ、全学を俯瞰(ふかん)できる能力が求められる。「研究科ごとに対象人数を割り振り、将来のキャリアパス支援は不十分といった弊害をなくす」(文科省科学技術・学術政策局人材政策課)狙いを込めた。研究担当の理事・副学長、学内をよく知る元理事らが候補者となるとみられる。

第6期科学技術・イノベーション基本計画では博士課程学生の「生活支援は年180万円以上」とした。一方で、実験やフィールドワークなどの研究計画により研究費ニーズは異なる。同プログラムは各大学で選抜した学生1人当たりで最大290万円が支給されるが、うち70万円は「事業統括配分経費」として各大学の事業統括が配分を決める。

同プログラムの公募第1弾の締め切りは15日。科学技術振興機構が申請を受け付ける。申請時の支援学生数に制限はないが、研究者育成の質とのバランスは事業統括が判断する。ある国立大学の学長は「6000人対象は大きい。かなりの学生がメリットを感じるだろう」と期待する。

一方、人工知能(AI)、量子、材料などの重点分野で約1000人を支援する「大学フェローシップ創設事業」は約50校を採択した。同プログラムと異なり、大学が資金を出して学生を支援する仕組みのためハードルが高い。しかし有償インターンシップ(就業体験)やリーダーシップ教育、リーディング大学院や卓越大学院など各大学のノウハウが生きる点は同じだ。助教らプロ向けの「創発的研究支援事業」では、リサーチアシスタント(RA)を務める博士課程の学生約800人への支援も進む。

中長期的には大学の研究や若手育成を支援する10兆円ファンドの「大学院教育・研究の高度化支援」が博士課程学生支援の柱になる。同時に日本学術振興会の特別研究員など「学生個人支援」と、創発に限らない多数の「競争的資金の活用」によるRA雇用もある。

文科省はこうした博士課程学生支援の拡充を通し、将来が見通せる安心感を与えることで博士課程に進む学生を増やしたい考えだ。

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日刊工業新聞2021年7月15日

COMMENT

山本佳世子
編集局科学技術部
論説委員兼編集委員

当初は名称も決まらず”6000人スキーム”などと呼ばれていた次世代挑戦的プログラム。大学フェローシップの1000人、創発のRA雇用の800人とあわせて整った。後押しとして大きかったのは昨年度の補正予算だ。「この三つで決定版」との声が聞こえる。博士学生はほかに日本学術振興会の特別研究員(JSPSのDC)のほか、医学系に多い社会人学生、国費支援の留学生などがいる。それらを除いて「仕送りやアルバイトがないと生活していけない」という、本当に支援が必要な博士学生に対するカバー率は、かなり高くなる計算だ。博士進学を思案する学部生まで含め、 気持ちをアゲる総合施策として定着することが期待される。

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