人間の脳を研究する世界屈指の大規模拠点の全貌

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7テスラMRI装置。病院で見かけるMRI装置よりかなり巨大だ(情通機構提供)

脳情報通信融合研究センター(CiNet)は、大阪大学吹田キャンパス内で、阪大と連携しながら「情報通信」をキーワードに人間の脳を研究するユニークな研究拠点だ。

生きた人間の脳を詳しく調べるためには、体を傷つけることなく脳の構造や機能を計測する必要がある。それを可能とするのがMRI(磁気共鳴断層撮影)とMEG(脳磁界計測)である。CiNetには4台のMRI装置と1台のMEG装置が稼働しており、研究機関としては世界屈指の規模。それらを駆使した計測技術に精通する12人の専任スタッフが研究者を手厚くサポートする体制を整えているのも特徴である。私はそのグループを統括している。

MRIは磁気を用いて体内を画像化する。磁気の強さをテスラの単位で表し、これが強いほど高精度な計測が可能となる。医療用MRIでは0・3テスラから3テスラが使用されているのに対し、CiNetでは7テスラが1台、3テスラが3台と高精度な機器がそろっている。

特に7テスラMRI装置は日本にもまだ5台しかなく、従来の3テスラでは不可能な高精細画像計測を実現している。MRIでは脳の構造のみならず、その血流の変化から脳活動を捉えることも可能で、近年、飛躍的にその応用範囲が広がっている。

MEGは神経伝達が作り出す微弱な磁気の変化から脳活動を捉えるものである。CiNetのMEGは、装置自体とそれを置く計測室が世界的にも類を見ない特別な仕様となっており、環境や体内からの磁気ノイズを抑制しつつ、地磁気の1億分の1レベルの微弱な脳活動由来の磁気信号を捉えることが可能である。

MRIは空間的計測精度に優れるのに対し、MEGは時間的計測精度に優れるため、互いの長所を組み合わせた研究を可能としている点もCiNetの強みだ。

CiNetのこれらの機器は、全て基礎研究に活用されており、国内外の多くの研究者が共同で利用している。また最近では、多くの企業が脳科学に関心を持ち始めているため、そのような企業との共同研究も積極的で、今後の利用拡大に期待している。

未来ICT研究所 脳情報通信融合研究センター MRI・MEG実験統括責任者 上口貴志
医学物理士。阪大生命機能研究科招へい准教授。阪大医学系研究科博士課程修了。阪大を経て2013年情報通信研究機構(NICT)主任研究員。19年から現職。

日刊工業新聞2021年6月15日

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