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クボタに脈々と受け継がれる水環境事業。高シェア誇る「MBR膜」とは?

クボタ常務執行役員・品部和宏氏インタビュー

環境問題解決に寄与

国内最大手の農業機械メーカーの印象が先行するクボタ。ただ、祖業は水道用鋳鉄管だけに水環境事業も130年超にわたり、脈々と受け継がれている。ダクタイル鋳鉄管は国内首位でバルブやポンプも専業メーカーに負けない輝きを放つ。そんな同事業の中でとりわけニッチな存在が排水処理に貢献する液中膜だ。派手さはないが今後の環境問題解決に寄与する。環境事業部長を務める品部和宏常務執行役員に液中膜の方向性などを聞いた。

―膜分離活性汚泥法(MBR)膜や膜機器は幅広い事業の中でも知られざる存在です。

「中近東などでは(MBR膜による)処理水はかんがいに使われることが多い。米国は300カ所に納入実績がある。シアトルやロサンゼルス、ニューヨーク近郊に瀬戸内海のような閉鎖性水域が多く、そこでの富栄養化防止に用いられる。海外は下水処理場が中心だが、国内は総菜やクリーニングの工場などの排水での産業廃棄物処理も多い」

―ニッチ分野ですが高シェアを誇ります。

「国内では約43%で首位。海外でも(仏スエズを買収した水ビジネス大手)仏ヴェオリアに次ぐ2番手とみている。(2020年12月期の)液中膜単体の売上高は78億円程度。(20年12月期の連結売上高が1兆8532億円の)当社の中での存在感は小さいが、ニッチ市場ではシェア確保に貢献している」

―今後の市場動向の見通しは。

「国内は下水処理場の改築で既設更新が見込まれる。現在、完工間近となる大阪城近くの中浜下水処理場(大阪市城東区)でも当社のMBR膜装置が用いられている。食品工場など産業排水は顧客にとっては『ノンコア業務』となる。このため(顧客の負担軽減となる)遠隔監視を含めたサービス提案を強化している。海外は南米、アジアなどで新興国が有望市場となる」

―人材育成は。

「大きな課題と捉えている。新入社員は確保できているが年齢構成で中間層など少ない層がある。その中で技能伝承にしっかり取り組む必要がある。海外における現地人材の育成も重要だ。技術レベルの維持・向上に向けて技術人材同士の情報共有も積極化したい」

【記者の目/AIで遠隔監視レベル向上】
MBR膜は素材メーカーも競合となるが、機械が主力事業のクボタはエンジニアリングから派生するアフターサービスなどが強みとなる。ESG(環境・社会・企業統治)の観点から排水の実態を開示する必要も見込まれるだけに、今後は人工知能(AI)活用などで遠隔監視のレベルも向上させる考えだ。(編集委員・林武志)

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日刊工業新聞2021年7月8日

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