がん細胞の代謝の働き、細胞が生きた状態で見える方法の仕組み
東大が確立
東京大学大学院薬学系研究科の小松徹特任助教、浦野泰照教授らの研究グループは、がん細胞の代謝の働きを細胞が生きた状態で見える方法を確立した。がん細胞がエネルギーを作り出す時に必要な糖やアミノ酸の代謝過程を蛍光シグナルで検出する仕組みで、さまざまな化合物の効果を検証できるようにした。がん細胞の機能を抑制する薬剤の開発につながると期待される。
がん細胞は自身が増殖を繰り返すために、体内のさまざまな物質を自身の活動エネルギーや構成因子の産生に利用する仕組みが知られている。だが、生きた細胞の中で薬剤効果を評価する効率的な仕組みがなかった。
研究チームは蛍光検出用のプローブ分子を使って生きた細胞の代謝の機能を評価できるようにした。これにより、糖の代謝を抑える化合物とアミノ酸の代謝を抑える化合物を発見した。
特にがん細胞がさまざまなアミノ酸を栄養源として用いる代謝過程を抑制する薬剤候補化合物を探索し、抗がん剤として承認を受けているレゴラフェニブという薬剤が、がん細胞のエネルギー源となるアミノ酸からのエネルギー産生を阻害してがんに“兵糧攻め”をする働きがあることを見いだした。
日刊工業新聞2021年7月7日