ウイルスと遺伝子の合わせ技でがんを溶かしつつ攻撃!より強力な抗がん作用に
オンコリスバイオファーマは、抗がん剤「OBP―702」を、人に使えるグレードの品質で製造する具体的準備段階に入った。同社が開発したがんを“溶かす”ウイルス「テロメライシン」の遺伝子配列の中に、がん細胞を攻撃する遺伝子「p53」を搭載する。より強力な抗がん作用を示すという。2021年中には臨床試験届けを出す段階まで開発を進めたい考えだ。
ウイルスに乗せてがんの遺伝子治療に試用された実績のあるp53と、同社が開発してきたウイルス、テロメライシンを合体させる。がんを溶かしつつ攻撃することで、より強力な抗がん作用をもたせられるという。
膵臓(すいぞう)がんや胃がん腹膜播種(はしゅ)など既存の薬が効きにくい領域の薬として開発したい考え。特に膵臓がんは、間質細胞と呼ばれる塊の中にがん細胞が発生するため、薬が届きにくいといわれる。702は間質細胞にも作用する可能性があるという。
浦田泰生社長は「胃カメラで膵臓まで到達させて、直接膵臓に注入できる。切らずに治せ、体への負担も少ない。多くの場面で活用してほしい」と話している。臨床試験は、免疫チェックポイント阻害剤との併用を想定している。研究は、共同研究者で同社創設者の岡山大学大学院医歯薬学総合研究科消化器外科学の藤原俊義教授が進めている。
オンコリスバイオファーマは、テロメライシンの開発を手がけてきた。同ウイルスは食道がんで有効な結果を示しており、中外製薬にライセンスアウトされている。
日刊工業新聞社2020年3月17日