新規事業の創出急ぐ村田製作所、成長戦略が描く道筋
村田製作所が社会課題の解決を軸に、新規事業の創出を急いでいる。世界首位の積層セラミックコンデンサー(MLCC)などコンポーネント、モジュールといった既存技術や協業を通じ「部品販売のビジネスモデルとは大きく異なる」(中島規巨社長)第3の事業ポートフォリオ創出に挑む。他が追随できない価値ある製品・サービスを生み出し、外部環境に左右されにくい事業体質で長期的な成長戦略を描く。(京都・大原佑美子)
村田製作所はニューノーマル(新常態)時代の健康ケア市場でビジネスチャンスを狙う。同社と帝人フロンティア(大阪市北区)の共同出資会社、ピエクレックス(滋賀県野洲市)は28日、UHA味覚糖(大阪市中央区)と口腔ケアに関する共同研究を始めたと発表した。
人の動きを電気エネルギーに変え、薬剤を使わず抗菌機能を持たせられる繊維「ピエクレックス」製のマスクと、UHA味覚糖が今後開発する、舌の汚れに働きかける独自の口腔ケア成分「DOMAC(ドゥーマック)」含有の高弾力グミで、長時間のマスク着用時に口腔内の菌の発生予防が期待できる点を訴求する。
年内発売予定の高弾力グミとマスクをタイアップした販促などで、消費者のマスク生活のモチベーション向上を支援。口の中と外からケアする習慣付けで、製品の拡販を狙う。
センサーを使った社会課題の解決にも乗り出す。村田製作所は7月めどに、インドネシアのパートナー企業を通じ現地の交通量をデータ化して提供するサービスを始める。ロードサイド広告の宣伝効果検証に生かせる。
高機能センサー「LiDAR(ライダー)」をメインセンサーに使い、雨や夜などの環境変化にとらわれず、高精度に交通量、車格、車両の平均スピードのデータを取得する。スマートフォンの位値情報をもとに割り出す人流データ購入と比べコストは3分の1程度になるという。屋外広告が成長市場であるタイやマレーシアでも順次サービスを始める計画だ。
今後はフィリピン、ベトナムでの市場調査に加え、インドネシアなどで二酸化炭素(CO2)・気圧センサーを用いた気象予測や、交通量が環境に与える影響(大気中の粒子状物質〈PM2・5〉量)などをデータ化して現地の行政施策に生かすなど、事業化の可能性を探る。将来は欧州にも展開したい方針だ。
村田製作所の中島社長は新規事業について「当社(単独)でできるのか、違う会社作ってでもやるべきかを含め、若いメンバーで検討している」と強調。価値観の変化が急速に進む中、目先の数字や自前主義にとらわれず、選ばれる商材をいかに早く投入できるかが長期成長のカギになる。