ジョブ型導入のNTT。新人事制度に試される攻めと守りのバランス
「これからは(自社グループの人材に)専門性が求められる。雇用もだんだん世の中で流動化してくると思うので、中途でスキルのある人を採用できるようにしないといけない。一定の『ジョブ型』の仕組みを導入する必要がある」(島田明NTT副社長)。
国内産業界で、職務の内容に応じて従業員を処遇するジョブ型の人事制度が広がりつつある。NTTは自社およびNTT東日本やNTTドコモといった主要子会社の大半で、2020年7月から部長級以上にジョブ型を導入した。21年10月以降は対象を課長級以上に改める計画で、管理職全体がジョブ型で処遇されることになる。
現在、課長級には能力に応じて処遇する「職能資格制度」が適用されている。これについてNTTはゼネラリスト型人材の育成が行いやすい利点がある一方、専門家が育ちにくかったり、年功主義的な運用に陥りやすくなったりするなどの課題があると判断。終身雇用は維持しつつも、社員の実力に応じた柔軟な登用や降格を推進する観点でジョブ型の運用を広げる考えだ。
中長期的な視点では、人事制度の見直しで収益源の多様化を加速できるかも問われる。NTTグループは海外売上高の拡大に取り組んできたものの、現状は道半ば。ドコモでは携帯通信料金の引き下げが進み、金融やコンテンツといった非通信事業の拡大が急務だ。島田NTT副社長が指摘する通り、こうした経営環境の変化に対応するには中途採用も欠かせない。
新たな人事制度が、従業員の心構えやNTTの企業文化に良い影響を与えるかどうかも注目される。島田副社長は通信技術の進歩の速さを念頭に「ついていけなくなるリスクも社員それぞれにある。新たな技術を自ら開発して使いこなすことについて、どれだけ働きがいを持って挑戦していけるかが重要だ」と語る。一方で既存の膨大な通信インフラの維持も必要であり、攻めと守りのバランスが試され続ける。