ドコモが若年層取り込みに躍起。5G普及の加速につながるか
NTTドコモが携帯通信や周辺商材で若年層を取り込む姿勢を鮮明にしている。19日に開いた新商品発表会で、ライブやeスポーツといった娯楽のコンテンツを訴求。機器関連では単身世帯の需要を踏まえ、設置工事が不要でWi―Fi(ワイファイ)環境を実現するルーターの投入も決めた。新サービスや新技術への感度が高い若者の支持をテコに第5世代通信(5G)の普及を加速できるか注目される。(編集委員・斎藤弘和)
「新たな価値やライフスタイル(生活様式)を提案することで、『ドコモの5Gを使ってみたい』と感じて頂ければ」―。発表会の冒頭、井伊基之社長はこう力を込めた。
ドコモは法人向けを含む多様な商材を展開してきたが、19日の発表は個人向けのコンテンツや端末に焦点を絞った。同日、動画配信サービス「dTV」に「ライブ」ジャンルを追加。今後は有料のオンラインライブや特典映像、独自の音楽番組などの配信を強化する。また、ゲームソフト大手のカプコンと共同でeスポーツの新たな大会を10月から開くと表明。5Gを活用し、試合中の選手の映像を配信して臨場感を演出したい考えだ。
端末では、スマートフォンなど6機種を28日以降に順次発売する。中でも注目されるのが、8月下旬に投入予定の、4Gと5Gに対応したルーター「home 5G」。工事不要で使える点を訴求し、単身世帯が引っ越しをした後にすぐ使いたい需要などを取り込む。月額4950円(消費税込み)で利用可能データ量が無制限という点も、動画を多く視聴する若年層の支持を集めそうだ。ドコモは数年間で100万契約を見込んでいる。
同社は従来、オンラインで各種手続きを行う格安な携帯通信サービス「アハモ」の投入などでデジタルに明るい世代の開拓を急いできた。
19日に発表した新製品群も「5Gを積極的に活用頂ける若い方々が受け入れてくれるような内容を出した。若者だけのものではないが、“先駆け”をつくりたい」(井伊社長)狙いがある。
現時点で5G契約数は400万を突破したものの、2021年度目標は1000万と開きがあり、達成できるかは予断を許さない。井伊社長も「まだまだ5Gを実感できるサービスが整っているとは考えていない」と自戒する。先端技術に親しんだ顧客の想像を上回るような商材を投入しつつ、5G通信可能エリアも着実に広げていけるかが試される。