ドコモ・KDDI・ソフトバンク、通信事業は伸び悩みも今期増益が見込める理由
携帯通信3社の2022年3月期連結業績(国際会計基準)は、全社が営業増益となる見通しだ。個人向けの通信事業は携帯通信料金引き下げが響いて伸び悩むものの、金融や法人向け事業といった非通信分野が収益を押し上げる。3社は非通信のさらなる強化に向け商材の拡充を急ぐ。自社が十分に持たない知見や資源を社外との提携も駆使して補い、収益源多様化を加速できるかが問われる。
「金融・決済など好調な非通信分野を伸ばしながら、トータルで増収増益を目指す」。NTTドコモの井伊基之社長は力を込める。21年3月に投入した携帯通信の格安な料金プラン「アハモ」は4月末時点で100万契約を突破。仮想移動体通信事業者(MVNO)向けの音声卸やデータ接続料も引き下げを始めた。これらの影響で22年3月期の通信事業は営業減益の見通し。
一方、21年3月期の金融・決済取扱高が前期比31%増の6兆9800億円となるなど、非通信領域が成長してきた。ただ井伊社長は「金融関係の商材が当社はまだまだ少ない」とし、このほど発表した三菱UFJ銀行との提携による新サービス展開に意欲を示した。
従来、三菱UFJ銀と提携してきたKDDIの高橋誠社長は「ドコモと三菱の話は、我々の関係に全く影響を与えない」と述べた。傘下のauじぶん銀行が三菱UFJ銀の出資を受けているなど、「関係は万全」(高橋社長)。金融事業の戦略としては、スマートフォン決済「auペイ」や銀行、クレジットカードの連携を強化しつつ、住宅ローンといった他商材の拡販につなげていくとした。
ソフトバンクの宮川潤一社長は、電子商取引(EC)や金融のほか、法人事業の成長も強調した。「“回線売り”という印象が濃かったが、今はデジタルマーケティングやセキュリティーなどを、総合的に企業や自治体へ納めている」。
23年3月期に同事業の営業利益を21年3月期比39・3%増の1500億円に引き上げる計画だ。